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【IF-Project】デラヒーバ杯2016に25名の教え子を送り込むヒロブラジリアン柔術、馬場弘樹代表に聞く

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hiroki-baba【写真】コパカバーナにあるデラヒーバ柔術でも修行を行っている馬場代表はオズワルド・アウベスの黒帯(C)IF-PROJRECT

27日(日)、東京都台東区の台東リバーサイドスポーツセンターで日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)公認の『ヒカルド・デラヒーバ杯2016』が開催される。25名が参加するヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜の馬場弘樹代表に、大会への意気込みを聞いた。
Text by Takao Matsui


――ヒカルド・デラヒーバ杯2016に、25名も参加すると聞いて驚きました。

「うちのアカデミーは、横須賀基地で働くアメリカ人生徒も多いんですが、来月、茶帯のカイル・ローデス選手が帰国することになりまして、記念にデラヒーバ杯へみんなで出場しようという声があがっていったんです。今回は25名ですが、今年の8月には別の大会に80名が出場しました」

――柔術熱が高い生徒が多いようですね。

「それは間違いないです。でも、みんな忙しいようですね。40歳の生徒が多いためか、家族や仕事の都合でなかなか練習に参加できない方も多いです。週2回、練習日を確保するのがやっとの人も多いようですし。練習時間が残り30分前に顔を出してスパーリングのみ参加する人もいますので、日々の生活の調整が大変そうです」

――馬場代表は、ブラジルで初めて黒帯を獲得した日本人として有名ですが、練習環境において両国の差を感じることはありますか。

「ブラジル人は、バイタリティのある人が多いです。もちろん環境やレベルの違いはありますので単純な比較はできませんが、そこは感じますね。ただ、ブラジル人は技がかかると早く諦めることもありますが、日本人はもう少し粘る印象があります」

――なるほど。そういう違いもあるのですね。指導している中で、心掛けていることはありますか。

「自分が学んだことや感じたことを伝えるようにしています。2年に1回は、課題を持ってブラジルへ行きアップデートしていますので、そこで得たことを教えるようにしています」

――例えば、具体的にどういうことがありましたか。

「そうですね……。少し前ならばベリンボロの攻略法や体重移動、細かいテクニックについてなどを向こうで確認したことがありました」

――モダン柔術と呼ばれるテクニックについては、どう考えていますか。

「柔術は古くからやっていますので、原形から変化していった過程や経緯を知っています。それを理解した上で取り組むのはいいと思いますので、否定はしません。しかし最先端の技の研究も大切ですが、やはり重要なのは基本。日本人は動画を見て覚えた流行りの技に飛びつく傾向がありますので、基本も同じように大切にしてほしいとは思っています」

――どのジャンルにおいても、それは同じなのですね。

「あと指導していて思うのは、できないことがあっても諦めずに続けてほしいということですね。ブラジル人は、壁にぶつかると『そのうちできるようになるよ』とよく言うんですけど、その通りだなと思います。根気強く続けていると、必ずできるようになる日がきますので、そこまで辛抱できるかどうかが勝負なんですよね」

――今回、大会に出場する選手へアドバイスはありますか。

「初めて出場する選手もいますので、1勝できるといいですね。練習したことを出してほしいと思っています。柔術は、学校や会社、家庭といった生活の中に組み込まれる存在になれる可能性がある競技だと思っていますので、できる限り継続してほしいです」

――アカデミーを設立して今年で13年目。新しい支部が横浜市緑区にオープンしたと聞きました。

「はい。6つ目の支部になります。仲間がオープンしましたので、応援してあげてください(中山トゥーカンブラジリアン柔術

――馬場代表も多忙な日々を送っているようですね。

「おかげ様で、あまり休みもなく働いています。昼2時から夜10時まで、ほぼ稼働しています。でもブラジルでは道場に寝泊まりして毎日練習していたので、あまり生活は変わらないんですけどね(笑)。ともかくデラヒーバカップをがんばります!!」


【IF-Project】デラヒーバ杯2016、黒帯ライトフェザー級優勝は西林、茶帯オープンは八巻が制す

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nishibayashi-vs-sawada【写真】黒帯で試合が成立したライトフェザー級は西林が優勝(C)TSUBASA ITO

27日(日)、東京都台東区の台東リバーサイドスポーツセンターで日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)公認の『ヒカルド・デラヒーバ杯2016』が開催された。主催者のデラヒーバ氏本人はセコンド業務のため来日することができなかったが、会場は熱気で埋め尽くされた。
Text by Tsubasa Ito


5名がエントリーしたアダルト茶帯フェザー級は、横山武司と八巻祐が決勝に進出。開始早々、横山が飛びついてスタンドのままクローズドガードの体勢へ。その後はトップからの八巻、下からの横山という展開が続く。ラスト1分半に八巻にパスのアドバンテージ1。これを守り切り、八巻がフェザー級の頂点に立った。

ワンマッチ決勝となったアダルト茶帯ライト級は、新村康行と山田洋平のマッチアップとなった。ダブルガードから山田が上になるが、すかさず新村がスイープを決めて2ポイントが入る。山田は下から右腕の道着をつかんで引き込もうとするも、新村がディフェンス。ラスト1分から山田が一気にパスガードを試みるが、新村が潰してタイムアップ。ポイント2-0で新村の勝利となった。

brown-open-podiumnアダルト茶帯オープンクラスは、同ウルトラヘビー級で優勝した井草紘明と、同フェザー級を制した八巻祐が2冠をかけて激突した。八巻が上、井草が下の体勢から、井草が八巻の右腕に両足をかける。

この右腕を抜いた八巻がすかさずパスガードを決め、3ポイントが入る。八巻はサイドコントロールから左足を井草の頭上へ回し、右腕を取って三角絞め。体格で大きく上回る相手に一本勝ちを収め、見事2冠を達成した。

podiumアダルト黒帯の中で唯一試合が成立したライトフェザー級は、ジエメウソン・ハッタの欠場により、初戦でも対戦した西林浩平と澤田真琴のリターンマッチとなった。澤田がハーフガードで西林の左足をとらえるが、これを抜いた西林がノースサウスポジションでパスガードを決めて3ポイント。

その後も西林がトップの状態でハーフガードを巡る攻防が続きタイムアップ。3ポイントのリードを守り切り、西林が初戦に続いて連勝。ライトフェザー級の頂点に立った。

また団体優勝はヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜が輝いている。

■ヒカルド・デラヒーバ杯2016 主なリザルト

【アダルト黒帯ライトフェザー級】
優勝 西林浩平(パトスタジオ)
準優勝 澤田真琴(DRAGON’S DEN)

【アダルト黒帯オープンクラス】
優勝 中村大輔(パトスタジオ)

【アダルト茶帯ルースター級】
優勝 中尾亮(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)
準優勝 赤堀祥一(ストライプル)

【アダルト茶帯フェザー級】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 横山武司(GRABAKA柔術クラブ)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 今泉貴史(パラエストラ渋谷)

【アダルト茶帯ライト級】
優勝 新村康行(グラスコ柔術アカデミー)
準優勝 山田洋平(DRAGON’S DEN)

【アダルト茶帯ミドル級】
優勝 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)
準優勝 山口勇生(リバーサルジム新宿Me,We)

【アダルト茶帯ウルトラヘビー級】
優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
準優勝 カイル・ロードス(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)

【アダルト茶帯オープンクラス】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)

【団体表彰】
優勝 ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜
準優勝 パトスタジオ
3位 DRAGON’S DEN

【IF-Project】デラヒーバ杯2016 茶帯2階級制覇=八巻祐、柔道の実力者がいよいよ黒帯へ

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【写真】茶帯2階級制覇。いよいよ八巻に黒帯が巻かれることとなった(C)TSUBASA ITO
yamaki
11月27日(日)、東京都台東区の台東リバーサイドスポーツセンターで開催された『ヒカルド・デラヒーバ杯2016』。X-TREAM EBINAの八巻祐は、群雄割拠のアダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスで2冠を達成。この大会で黒帯への昇級を決めた八巻の足跡をたどってみたい。
Text by Tsubasa Ito


yamaki-in-open3月の柔術新聞杯以来、8ヵ月ぶりの試合出場となったヒカルド・デラヒーバ杯2016でアダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスの2冠を達成した八巻。特に11名がエントリーしたオープンクラス決勝は、ウルトラヘビー級の井草紘明に対し、パスガードから流れるように決めた三角絞めで一本勝ちを収める圧巻の内容だった。

「井草選手は自分が苦手としているスパイダー系で力も強いので、ジワジワ攻めて少し体力が消耗してきたかなというところで、うまくパスガードができて腕をくくれました。最後は柔道の三角絞めが入りましたけど、あまり相手は警戒していなかったところかなと思います。本来は腕の中から足を絡めて絞めますが、今回は首をダイレクトに挟む絞め方で、ちょうど頸動脈に自分のヒザの内側が入りました」

「柔道の」というワードからもわかるように、八巻は現役の柔道家としても活動しており、2014年の全日本実業柔道個人選手権では66kg級の準々決勝で、ロンドン五輪銀メダリストの平岡拓晃を一本で破って日本一に輝いたほどの実力者だ。普段は神奈川県内の私立高校で保健体育科の教員として働いており、柔道部の顧問も担当している。八巻が柔術を始めたのは、今から3年前の24歳の時だった。

「柔道部の顧問になるにあたって寝技を勉強したいと思ったので、寝技が好きな生徒を誘ってX-TREAM EBINAに通い始めました。それに、生徒との練習だけではなかなか自分個人の練習にならないこともあって、自分の練習場所を探すという目的もあったんです。立技の練習にはならないですけど、寝技の練習で体幹が鍛えられることは、柔道での経験上わかっていました。柔術を習うことで、結果的に立技にも活かせるような体づくりができるんじゃないかと思ったんです」

yamaki-in-feather体育教師、週6日の部活動、生徒の試合の引率と多忙なスケジュールの合間を縫い、八巻は週2日ほど道場へ通った。柔術の試合にも出場するようになり、柔道で磨いた投技からのパスガードや関節技で、青帯や紫帯では連戦連勝を重ねた。だが茶帯に昇級してからは柔術の壁にぶつかることとなる。

「下から攻める人がすごく上手なテクニックを使っていたので、上からのパスガードがなかなか決まらなくなってきて、負けることが増えたんです。X-TREAM EBINAの柳澤(哲裕)会長からそういった選手への対応を教わって、今の形に至りました。今日(デラヒーバ杯2016)の試合だって、1~2年前だったら簡単にやられていたと思うんですよ」

柳澤会長の指導により、柔術家としてのテクニックを身につけた八巻は、2015年の全日本選手権アダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスで準優勝を飾り、茶帯トップクラスの仲間入りをはたした。柔道の幅を広げるために始めた柔術だったが、いつしか柔術そのものの奥深さや魅力に取りつかれていく。

「柔道は投技が67本、固技が29本と数が決まっているんですけど、柔術の場合は技も日々発展していきますし、ブラジルで主流の技が日本に入ってきたりするので、アップデートできるところがおもしろいと思います。そして何よりの魅力は、道場の人たちの存在ですよね。仕事が忙しくても、21時、22時くらいから道場に来て練習をしている姿に感銘を受けましたし、生徒にもそういう姿勢を見習うように言っています。

今までは自分が強くなるためだけにひたすら練習していたんですけど、X-TREAM EBINAは和気あいあいとした雰囲気があって、柔道で経験してきたものとは違ったんです。楽しいという理由でずっと柔術を続けていることが、結果的に僕の競技力の向上につながっていると思います」

地道に柔術の技術を磨いたことで、ヒカルド・デラヒーバ杯2016では2階級を制覇。X-TREAM EBINAからはふたり目となる黒帯への昇級が決定した。

「練習をさせてもらっても黒帯の選手はプレッシャーの強さが全然違いますし、茶帯や紫帯に比べると一気にレベルが上がるイメージがあるので、ここからが本当の勝負だと思います。自分のスタイルが黒帯の選手に通用するか、自分自身に期待しています。まわりの方に応援してもらっている分、もうひとつ上のステージでも楽しんでもらえるような試合をしたいですね」

ヴァンダレイ・タカサキやエリクソン・タケウチなど、茶帯の舞台でしのぎを削ったライバルたちは、一足早く黒帯のステージで戦っている。最高峰の舞台での再会が、今から待ち遠しい。柔道と柔術。似て非なるふたつのジャンルをハイレベルで両立させ、結果を残してきた八巻。異例の挑戦を続ける男の今後も目が離せない。

■ヒカルド・デラヒーバ杯2016 主なリザルト

【アダルト黒帯ライトフェザー級】
優勝 西林浩平(パトスタジオ)
準優勝 澤田真琴(DRAGON’S DEN)

【アダルト黒帯オープンクラス】
優勝 中村大輔(パトスタジオ)

【アダルト茶帯ルースター級】
優勝 中尾亮(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)
準優勝 赤堀祥一(ストライプル)

【アダルト茶帯フェザー級】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 横山武司(GRABAKA柔術クラブ)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 今泉貴史(パラエストラ渋谷)

【アダルト茶帯ライト級】
優勝 新村康行(グラスコ柔術アカデミー)
準優勝 山田洋平(DRAGON’S DEN)

【アダルト茶帯ミドル級】
優勝 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)
準優勝 山口勇生(リバーサルジム新宿Me,We)

【アダルト茶帯ウルトラヘビー級】
優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
準優勝 カイル・ロードス(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)

【アダルト茶帯オープンクラス】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)

【団体表彰】
優勝 ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜
準優勝 パトスタジオ
3位 DRAGON’S DEN

【JBJJF】東京国際 26名出場、カルペディエム石川祐樹代表「東京国際の話をしなくて良いんですか?」

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carpediem【写真】国際色豊かなのもカルペディアムの特長だ(C)CARPEDIEM

18日(日)、東京・墨田区総合体育館で日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)主催の『東京国際柔術選手権』が開催される。

同選手権に26名が参加するカルペディエムの石川祐樹代表に、大会への意気込みと道場論を訊いた。
Text by Takao Matsui


――石川さんをキャッチするのに苦労しました(笑)。相変わらず多忙のようですね。

「申し訳ありません。福岡へ行っていました」

――福岡は石川代表の故郷ですから、里帰りですか。

「それもありますが、福岡に新しい道場を出すことになりまして、内装作業の立ち合いに行っていました」

――いよいよ故郷にも道場を出されるんですね。

「これまで福岡へ道場を出すのは難しいと思っていたんです。都内だとメインは電車で移動することになると思いますのである程度の計算はできるのですが、福岡は車と電車の中間の文化。道場を出すのは、なかなか厳しい条件かなと思っていましたので」

――完全に車で移動する場所は、逆に計算できるわけですね。

「土地や家賃が安くなれば、その分、駐車場を確保できます。実際にアマゾン(杉江“アマゾン”大輔)のカルぺディエム・ホープは、広い駐車場がありますから、とても便利ですしね。

電車移動のみで行ける距離ならば駐車場はあまり必要ではありませんが、両方を兼ね備えることになれば、収支バランスを保つのは難しくなると考えていました」

――それでもあえて、福岡へ道場を出す理由とは?

「ちょうどいい物件があったからです。福岡の博多にある祇園駅の近くに道場を出すんですけど、大きい通りがあってオフィスが多く、会社帰りに寄ることも可能です。

駐車場も近くにありますし、通うには便利かなと思っています。2月1日にオープンしますので、ぜひ興味のある方はお立ち寄りください(住所:福岡県福岡市博多区冷泉町10-26 冷泉ビル)」

――ちなみに道場責任者は誰になるのですか。

「総合格闘技の試合もしている田村ヒビキに任せることになりました」

――パラエストラ東大阪代表の田村選手ですか!!

「はい。実績も申し分ないですし、信頼しています。あと2人、スタッフが加わり、3人で指導していくことになります」

――石川代表はオーナーの立場ですか。

「いえ、オーナーは別にいます。これは書いていただいても特に問題はありませんが、私がオーナーなのは青山だけです。私はブランディングのコンサルティングという立場で、カルペディエムのディレクターをしています」

――そうなのですね。それにしても各道場は、どこも綺麗で心地良さを感じます。

「フィットネスジムは、どこも普通に綺麗で清潔ですよね。柔術の道場も、そこは負けないようにしたいんです。

毎日、消毒をしないと蜂巣炎(ほうそうえん)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの病気になるのも怖いですし、そこはスタッフにも徹底させています。また臭いもできる限り、なくすように努力をしています」

――空間のデザインも素敵ですね。

「ありがとうございます。そこは、もう自分の好みですね。福岡は、Reebokさんと提携して初めての道場になりますので、大きなロゴが入っています」

――リーボックと提携ですか。どこまでも大きくなりますね、カルペディエムは。

「東京国際の話をしなくて良いんですか?(笑)」

――話が面白くて、つい長くなりました(笑)。東京国際は、26名の選手が出場しますね。

「キッズが多いです。もう少し、うちのインストラクターにも出てほしいんですけどね。出場する道場生には、がんばってほしいです」

<この項、続く>

【JBJJF】東京国際 カルペディエム石川祐樹代表「結果として気になるのは、相対評価」

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18日(日)、東京・墨田区総合体育館で日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)主催の『東京国際柔術選手権』が開催される。
Text by Takao Matsui

同選手権に26名が参加するカルペディエムの石川祐樹代表インタビュー後編も、その道場論&柔術論──つまり石川祐樹の人間論が話題の中心となってしまった。

<石川祐樹インタビューPart.01はコチラから>

――どのような試合を期待しますか。

「ケガをしなければ、それでいいです。もちろん優勝はしてほしいですが、一般会員さんには無理に試合をすることだけはやめてほしいです。

インストラクターには、試合に出ろという圧力をかけ過ぎないように注意しています。

本音を言えば、一度くらいは試合をしてほしいですが、人に言われて無理に試合をしても面白くないですからね」

――石川代表は、あまり会場に顔を出さないと聞きました。

「土・日は、練習を楽しみにしている会員さんも多いので、大会があるからといって道場を閉めるわけにはいきません。

土・日に休むフィットネスジムはないですよね? 年末年始も大晦日と元旦のみ休みで、1月2・3・4日は広尾道場を開けています」

――ご家族で過ごす時間は限られてしまいます。

「ずっと、そうしてきましたから仕方がないです」

――娘さんと過ごす時間が……。

「でも、逆に普段の日に休めることもありますから」

――ケガがあるかないか以外に、大会は気にならないのでしょうか。

「一般会員さんの結果として気になるのは、相対評価ですね」

――相対評価?

「つまり、大会に参加している青帯が全員試合ですぐに負けてしまったとしたら、少し昇級が早かったという基準ができます。

逆の結果が出れば、遅れているという判断になります。帯の昇級については、僕らは認定試験という制度を取り入れていませんので、そうしたことも判断基準になりますね」

――それは、逆に分かりやすいかもしれませんね。カルペディエムには、玉木強選手、岩﨑正寛選手、橋本和之選手、渡辺和樹選手……錚々たる面々が揃っています。

「私の中でスタッフと一般会員さんは、完全に分けています。彼らはフルタイム柔術家ですからね。常に結果を求められてプレッシャーになっていると思いますが、野球、サッカーでも一流と言われる選手は、みんなそうした環境で戦い、生き残っています。

見切り発車で、そうした環境をつくりましたが、正直羨ましいんですよ。私は1秒たりともフルタイム柔術家が実現できなかったので」

――柔術のみで生計を立てるプロ柔術家ですね。

「そんなに生活を楽にできるほどはあげられないんですけど、みんな結果を残そうとがんばっています。

橋本なんて、あと1年で大学を卒業できたのに中退してまで上京しましたからね。卒業してからでもいいのに……という声もありましたが、あそこで1年待っていたら『いらない』と思っていました」

――なぜですか。

「あの年齢の1年は、年をとってからの3、4年に匹敵するくらいの経験を得ることができるからです。それにそこまでの情熱がなければ、トップへ行くことはできません。そこは評価しています」

――ロジカルで指導も上手なイメージがあります。

「そこは……、事務的なミスが多いんですよね。僕に事務的なミスのことでガツンと怒られた日の夜でも、Twitterで映画観て感動したというような書き込みをしていたんです。

自分だったら、しばらく凹んでいると思うんですけど、ちょっと驚きましたね(苦笑)」

――いい意味でも悪い意味でもマイペースなのですね(笑)。岩﨑選手も、指導が上手いという話しを聞きます。

「もう少し、目端が利くといいんですけどね。いろいろな会員さんがいるわけだから、控え目な人にも声をかけられるようになってほしいです。

ただ、アカデミーを背負っている責任感を持っていますし、トップを狙う意識も高いですね」

――まだまだ話は尽きませんが、最後にどのような道場を目指しているのか。理想を聞かせてください。

「みんなで柔術を楽しめる空間をつくっていきたいです。インストラクターには厳しいことを言いますが、みんな柔術が好きで入って来たわけですからね。

試合に出たい人は挑戦すればいいし、趣味として楽しみたい人は一定の距離を保てばいい。それぞれの柔術ライフを送ってもらえるのが理想です。

私はプロ野球の山本昌(元)投手のような存在となり、手が足りなくなったらスーパーサブとなって指導していきますよ(笑)」


【JBJJF】東京国際 嶋田裕太が圧倒的な強さでLフェザー制し、無差別はIMPACTOがクローズアウト

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tokyo-international-jjc【写真】国内は敵なし、2017年度はノーギでも世界最高頬へのチャレンジが噂れる嶋田裕太がライトフェザー級で圧倒的な強さを見せた(c) TSUBASA ITO

18日(日)、東京都墨田区の墨田区総合体育館でJBJJF主催「東京国際柔術選手権2016」が行われた。アダルト黒帯オープンクラスでチャールズ・ガスパーが優勝、嶋田裕太がアダルト黒帯ライトフェザー級を制すなど、見どころの多い大会となった。
Text by Lighthouse


アダルト黒帯ライトフェザー級は宮本和幸の欠場により、ワンマッチで嶋田裕太と大西巧之が優勝を争うこととなった。アジア選手権以来、卒論の仕上げを最優先してきた嶋田は、いきなり大西からテイクダウンを奪い、2ポイント先取。パスを狙いつつアドバンテージを稼いでいく。そのままパスガードで3ポイント加算。大西が足を戻しても、再びパスを決め8‐0とリードする。

yuta-shimada勢い乗った嶋田はマウントポジションからバラタプラッタを仕掛けるが、ここは大西がディフェンスして逃れる。スタンドから再開となり、嶋田はテイクダウンに成功してそのまま上に乗ってギロチンチョークに入り、今度はきっちりと一本勝ち。予想通りの圧倒的な強さで優勝を果たした。

チャールズ・ガスパーと廣瀬貴行によるワンマッチ決勝となったアダルト黒帯ライト級は、ガスパーがサイドポジションからパスガードを狙うも、廣瀬は下からガスパーの右足を取り、リバーサルに成功。残り2分半で2ポイントが入る。

トップポジションとなった廣瀬に対し、ガスパーはスイープを仕掛け廣瀬の腰が浮く場面もあったが、必死にこらえる。その後も再三スイープを狙うガスパーだったが、トップポジションをキープした廣瀬がポイント2-0で逃げ切り優勝を決めた。

4名がエントリーしたアダルト黒帯ミディアムヘビー級は、松村威の欠場により神田崇広とアラン・アウベス・フィデレスが対戦した1回戦が、そのまま決勝戦に。開始早々、神田が引き込みクローズドガードの体勢となる。フィデレスが立ち上がってパスガードを狙いにいくと、神田は右足を取りながらスイープを成功させ2ポイントが入る。

神田はそのままアキレス腱固めを狙いにいくが、仰向けになった際にフィデレスがスイープを決めすぐさま同点に戻す。その後も一進一退の攻防が続き、タイムアップ。ポイントは2-2の同点だったが、着実にアドバンテージを加算したフィデレスがアドバンテージ6-1で接戦を制した。

open-podiumアダルト黒帯オープンクラスは、準決勝第1試合でチャールズ・ガスパーとミディアムヘビー級を制したフィデレスが対戦。フィデレスは50/50ガードの体勢からスイープを成功させ、2ポイントが入る。対するガスパーも、即スイープを決め返して同点。ポイント2-2の接戦はレフェリー判定に持ち込まれ、ガスパーが決勝進出を決めた。

もうひとつの準決勝は、ミケヤス・トシオ・アサダと神田崇広の対決となった。神田がクローズドガードの体勢となり、スイープを決めて2-0。逆にアサダもスイープを決めて2-2の同点。アサダはトップから積極的にパスガードを狙うものの、神田がスイープを決め再びリードを奪う。試合終了間際、アサダが執念のスイープを決めてポイント4-4とし、アドバンテージ4-1でアサダが逆転勝利を収めた。

決勝はIMPACTO JAPAN B.J.J同士の対決となったためクローズアウトとなり、優勝はガスパー、準優勝はアサダが分け合っている。

■東京国際柔術選手権2016 主なリザルト

【アダルト黒帯ライトフェザー級】
優勝 嶋田裕太(ネクサセンス)
準優勝 大西巧之(リバーサルジム川口リディプス)

【アダルト黒帯ライト級】
優勝 廣瀬貴行(パラエストラTB)
準優勝 チャールズ・ガスパー(IMPACTO JAPAN B.J.J)

【アダルト黒帯ミディアムヘビー級】
優勝 アラン・アウベス・フィデレス(ブルテリアボンサイ)
準優勝 神田崇広(GRABAKA柔術クラブ)

【アダルト黒帯オープンクラス】
優勝 チャールズ・ガスパー(IMPACTO JAPAN B.J.J)
準優勝 ミケヤス・トシオ・アサダ(IMPACTO JAPAN B.J.J)
3位 神田崇広(GRABAKA柔術クラブ)
3位 アラン・アウベス・フィデレス(ブルテリアボンサイ)

【団体表彰】
優勝 トライフォース柔術アカデミー 
準優勝 CARPE DIEM
3位 X-TREME EBINA

【JBJJF】東京国際 ライトフェザー級優勝・嶋田裕太「ムンジアルは1回戦突破できるか? ADCCも視野に」

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yuta-shimada【写真】国内では敵なし。しかし、世界の壁の厚さ&高さは茶帯時代に十分に経験している嶋田 (C) TSUBASA ITO

18日(日)、墨田区総合体育館でJBJJF主催「東京国際柔術選手権」が行われ、アダルト黒帯ライトフェザー級で嶋田裕太が優勝した。圧勝にも嶋田自身は納得していなかった。
Text by Takao Matsui


――優勝おめでとうございます。大西巧之選手からギロチンチョークで一本勝ちを収め、圧勝の試合でしたね。

「いえいえ、全然ダメです。反省点ばかりの試合でした」

――えっ、そうなのですか。

「マウントをひっくり返されてしまって……」

――あの場面は、どのような展開だったのでしょうか。

「マウントからバラタプラッタを狙ったんです。でも、練習であまりやらない動きだったので、逃げられてしまいました」

――そこが課題として残ったわけですね。

「そうですね。試合はいつも通りに練習でやっていることを出そうと思っていたんですけど、いつもはやらないことをやってしまいました」

――しかし、試合で新しいチャレンジをすることもあるのでは?

「いえ、それではダメです。練習で新しいことを取り入れて自分の動きにしていくのはいいんですけど、反対ではこういう失敗を招くことがあります。今回は、たまたま勝てたから良かったんですけど、ここを修正しておかないと次にまた同じ失敗をしてしまう可能性があります。

最後のギロチンも、首を極めつつ足を絡めて攻めないと、逃げられていたかもしれません。バラタプラッタの攻防も含めて、練習不足を痛感しました」

――厳しい自己評価ですね。

「足りないことだらけなのは分かっているので、とにかく練習するのみです。それしかありませんから」

――アジア選手権では、2016年の世界選手権(ムンジアル)ベスト8の加古拓渡選手から20-0で圧勝し、宮地一裕選手を下して優勝。世界へ向けての期待は一気に高まっています。

「加古さんは、コンディションの問題があったのではないでしょうか。あの結果だけで、海外の選手に勝てるとは思っていませんし、そんなに甘い世界ではないことも知っています。

期待されるのはとても光栄なことですが、ムンジアル1回戦を勝てるか──どうかではないでしょうか」

――とても冷静ですね。

「背伸びをしたくないんです。以前、パンアメリカン選手権で優勝候補の一角と対戦することとなり、強がって焦ってしまい本来の自分の動きがまったくできずに1分で一本負けをしたことがありました。

周りのサポートを受けつつ海外まで行って、そこで失敗に気づくなんて、本当に申し訳なかったですし、情けなかったです」

――いわゆる自滅のパターンにはまってしまったんですね。

「なので2017年は、またパンアメリカンに出場したいですね。黒帯になって、どこまで海外で通用するのか試してみたいです」

――今年はアジア選手権で優勝した後、しばらく試合間隔が空きました。

「大学の卒論を書いていました。うまくいけば、来春に卒業見込みなんです(苦笑)。卒業したら、柔術に専念できるので楽しみです」

――指導をしながら生計をたてるわけですね。

「はい。まさか自分がそういう立場になれるなんて考えてもいなかったんですが、とても恵まれていると思います。大会に出ているほとんどの選手は、仕事や家庭がある人も多いことでしょう。

だからこそ練習ができない人の分までやらなければいけないと、強く思っています。それが一番のモチベーションになっています」

――2017年のことも出ましたが、今後の予定も教えてください。

「年末はRIZINのグラップリングで、65キロ級に出場する予定です」

――RIZINの柔術選手権への出場ではないんですね。

「2017年はアブダビコンバットクラブ(ADCC)もあるんで、ノーギにも出てみようと思いました。もともと普段から、ギには固執しないようにしていますし、スパイダーガードも使いませんから。どちらでも問題はありません。

あとは、先ほど言ったパンアメリカン、ムンジアルはもちろんのこと、ブラジルでも修行したいですね。国内にいる間は、ウエイトトレーニングでパワーをつけたいと考えています。

海外の技術の進化は著しいので、それを追い越すのは難しいかもしれませんが、フィジカルで差を埋めていくことは可能ですから」

【JBJJF】東京国際後 中井祐樹JBJJF会長に聞く「強い黒帯と他の黒帯の格差は広がっている」

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yuki-nakai【写真】東京国際、日本柔術界の2016年と2017年について中井会長の話を訊くと、話題は柔術論へ (C) TSUBASA ITO

18日(日)、墨田区総合体育館でJBJJF主催『東京国際柔術選手権2016』が行われた。大会を開催したJBJJFの中井祐樹会長に、2016年を振り返りつつ2017年へ向けた抱負を語ってもらった。
Text by Takao Matsui


――東京国際柔術選手権を終えてみての手応えはいかがでしたか。

「東京国際は久しぶりの開催となりましたが(前回は2011年に実施)、400名近くも参加者が集まりました。『この大会の開催を待っていました』という声も多く聞きましたので、開催できてよかったと思っています」

――かなりの手応があったのですね。

「はい。こうした大会を開催し、周知できたことは収穫といっていいでしょう。さらに今後も大きな大会になっていければいいなと思っています」

――大会で気になった選手はいましたか。

「アダルト茶帯で2階級を制した禿川尊法選手(パラエストラ北九州)ですね。久しぶりに重量級の選手が出てきたので、今後が楽しみです。

あとはアダルト黒帯の各階級で優勝した選手はもちろんですが、マスター3黒帯ライトフェザー級で優勝した金古一朗選手(シュラプネル柔術アカデミー)ですね。澤田真琴選手(DRAGON’S DEN)に勝って優勝するところは、さすがレジェンドです。マスターの枠になりますが、生涯闘っていく決意をしたのかなと、僕は受け取りました」

――なるほど。2016年はジャパニーズ・ナショナルの開催など、JBJJFは新しい試みも多かったと思いますが、成果としてはいかがだったでしょうか。

「そうですね。ジャパニーズ・ナショナルは、IBJJF主催の国際大会として日本の選手がポイントを獲得できるという意味でも、とても意義のある大会だったと思います。またアジアという視野を広げれば、ソウル国際、アジア選手権もありましたので、ポイント獲得も含めて切磋琢磨できた大会になったのではないでしょうか」

――2016年のムンジアルでの日本の結果はどう分析されていますか。

「世界選手権は国別対抗戦ではないので、日本という枠で見ていいのかは分かりませんが、女子にはなりますが日本が1階級をとったことについては、これかも宿願にしてきたいと思います。男子については表彰台に乗るということを期待されていると思いますので、なかなか壁は大きいなと痛感しました」

――世界との差が広がっているようにも感じました。

「世界と日本というと語弊がありますので、強い黒帯の選手と表彰台に上がれないその他の黒帯の選手と表現した方がいいと思います。その格差は、たしかに広がっているような印象を受けましたね」

――その理由は、どのようなことが考えられますか。

「まずポイント制が導入されたことで、その差が大きく開いています。強い選手は、大会でより多くのポイントを獲得してスポンサーをつけて生活しています。それを維持するためには多くの大会に出場して結果を求められるようになりますから、さらに経験を積むことができます。

実力のある選手が、より強くなる。そうした差が、開いているように思いますね」

――なるほど。それを打破するためには、なかなか厳しい状況ですね。

「賛否両論を承知で話しますと、そうした差を埋めるためには生活と柔術を密着させ、なおかつ各大会に出場する環境に持っていく必要はあると思っています。

MMAもそうだと思いますが、絶対的な情報量が違うので、メインの大会が開催されている国に行くのが差を埋めるための一番の近道です。

大相撲で横綱になるために毎回モンゴルから日本へ通っていただけでは、なかなか到達するのは難しいと思いますし。それは、柔道やムエタイも同じでしょう。

毎週のように世界チャンピオンと練習や試合をしていれば、そのレベルに近づくことはできると思います。その環境を整えられた選手が、表彰台へ上がることができるのではないでしょうか。

もちろん、それを実現するのは簡単なことではないんですけど」

――そこに近い選手は、日本にもいるはずですよね。

「日本で有名な選手が海外でも知れ渡っているかどうかまでは、分かりません。でも、出てきてほしいですね。亡くなった人を出すのは本意ではありませんが、吉岡大さんは(2016年10月に他界。享年40)、ブラジルから恐れられた男子選手でした。

彼のスタイルはあまりにも個性的過ぎて強かったため、ブラジルが本気で潰しにきたという認識があります」

――2008年の世界選手権で黒帯ライトフェザー級準優勝でした。

「あそこまで海外を本気にさせてほしいですね。厳しい言い方になりますが、凡客であるなということです。日本の選手は、トップに行けるだけのポテンシャルを十分に持っていますから」

<この項、続く>


【JBJJF】東京国際後 中井祐樹JBJJF会長に聞く「柔術は他のスポーツや格闘技との共存が可能」

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yuki-nakai【写真】個人的に凄く印象に残っている中井祐樹氏の写真。この目力をもって試合に臨む。そこは打撃有りだとか無しを超越した命の削り合いに挑む覚悟が感じられた。さて、この中井さん──いつの時のモノでしょうか。柔術関係の方からの返答お待ちしています(笑)。中井さんご本人からでも構いません(C) MMAPLANET

JBJJFの中井祐樹会長インタビュー後編。18日(日)、墨田区総合体育館で行われたJBJJF主催「東京国際柔術選手権2016」後に中井会長に2016年の振り返り、RIZIN柔術、そして2017年のJBJJFの活動に大した尋ねた。すると──。

柔術連盟の代表である一方、バーリトゥードを戦ってきた格闘家、あらゆる格闘技をフラットに見る目を持つ中井氏ならでは、含蓄ある柔術論が聞かれた必読のインタビューとなった。
Text by Takao Matsui

<中井祐樹インタビューPart.01はコチラから>


――ところで2016年の最後は、RIZINのイベントの中で柔術の大会が開かれます。

「この大会の位置付けとしましては、まったく柔術を見たことがない人に対しての“ショーウインド”だと思っています。

RIZINは、PRIDE由来のイベントと言いますか、格闘技やMMAファンが、さいたまスーパーアリーナに三日間集う格闘技エキスポとして注目を集めていると考えています」

――29、30、31日の三日間開催です。柔術は30日に大会が行われますね。

「競技は、3時間くらいになると思います。時間の関係で100名ほどで足切りすることになりましたが、今後の反響次第ではさらに規模が大きくなる可能性もあります。柔術を初めて見る方も多いはずですので、こうした大会をキッカケにして広めていきたいと思っています」

――柔術は初見の人々にはルールを把握するのは難しいかもしれません。

「ルールの周知もやっていきたいのですが、分かりやすく言えば、ギブアップ(タップ)を取れれば一本勝ち、取れなければいいポジションにいた選手が勝者になると覚えていただくだけでも十分に楽しめるはずです。

MMAの試合で沸くであろう攻防の中のバック、マウント、サイドそれぞれのポジションを取った選手がポイントを獲得していきます」

――MMAと柔術を分けて考えない選手もいますね。

「究極は、同じ競技だと思っています。MMAの技術として活かすために、ブラジル人が柔術のポイント配分を決めてきた背景もありますからね」

――今回は、主催のRIZINの会見に佐藤ルミナさん、長南亮さん、大沢ケンジさんといった錚々たる面々が集まりました。注目度も抜群ですね。

「僕らは、MMA、グラップリング、柔術とそれぞれ違うジャンルの大会を開いていますが、
あくまでも(ルールによる)チョイスの違いであって、本質は一緒なんです。競技の発展を願うという意味でも、気持ちは一緒だと思っています」

――なるほど。では来るべき2017年、中井さんはJBJJFにとってどのような1年にしたいとお考えですか。

「大会でいえば団体戦とか、やっていない地域での選手権なども増やしていきたいですね。国内の柔術人口は、どんどん増えています。キッズも盛り上がってきていますので、大会に出場できる機会を多くつくっていきたいと考えています」

――子ども頃からやっていれば、強い選手が出てきそうですね。

「最初は、結果を求めなくていいと思います。それよりも経験値を積むための機会を増やすほうが重要です。

そうした日本の牧歌的な雰囲気、オリンピック競技のように深く入り込むだけではないものも同時に残していきたいですね」

――大人になれば結果を求められますから、柔術を嫌いになってほしくないですね。

「柔術の最大の長所は、他のスポーツや格闘技との共存が可能なところです。安全性が高いところで格闘技が楽しめる競技ですし、野球、サッカー、陸上、サーフィンなにをやっても、柔術にフィードバックが可能です」

――そういうものなのですか。

「はい。チェスをやっても、柔術へ活かされると思っていますので。柔術をやればサッカーがうまくなるとは言えませんが、逆は間違いなくあります。

柔術に関しては、どんなことでも応用できる競技なんです。護身術として身につけるべきだと思いますし、疑似危険脱出シュミレーションドリルなんですよ」

――疑似危険脱出シュミレーションドリル? 面白い発想ですね。

「そういう意味で柔術は、格闘技は、生活・人生に近い競技なんです。本来は、万人がやるべき競技だと思っています」

【JBJJF】東京国際マスター3黒帯ライトフェザー級優勝・金古一朗「背中を見せる必要がある」

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kaneko-vs-sawada【写真】眼光鋭く得点ボードに目をやる金古 (C) TSUBASA ITO

18日(日)、墨田区総合体育館でJBJJF主催『東京国際柔術選手権2016』が行われた。マスター3黒帯ライトフェザー級は、国内ではひさびさの試合出場となった金古一朗が制覇。アダルト黒帯で4度の全日本制覇やアジアオープン優勝など、輝かしい実績を誇る金古だが、Ground Impact 2015を最後に第一線から退き、昨年11月にはシュラプネル柔術アカデミーをオープンしている。今大会に出場した理由や今後の展望を聞いた。
Text by Tsubasa Ito


――『東京国際柔術選手権2016』では、マスター3黒帯ライトフェザー級を制しました。大会の感想をお願いします。

「日本で試合をするのは1年2ヵ月ぶりだったので、緊張しました。去年の11月に道場をオープンしたんですけど、そちらが忙しくて国内の試合に出ていなかったんです。去年で現役生活に一区切りをつけて少し本気度も落としたんですけど、それでもやっぱり緊張するんだなと思いました」

ichiro-kaneko――澤田真琴選手とのワンマッチ決勝では、ポイント7-0で完勝を収めました。

「変則的な選手で密着されるとやっかいなので、いつも通り距離を取って自分の攻めをやろうと思いました。結果としては、自分のプランで試合運びができたんじゃないかと思います。

マウントを取って極めまでつなげられたらベストでしたけど、相手をまたいだところで戻されてしまったので、そこは課題が残りました」

――今年8月には、ラスベガスで開催されたワールドマスターズで初優勝を飾りましたね。

「ずっと目標にしていたので、やっと獲れたという感じでした。手放しでうれしいというわけでもなく、選手として最後の目標を達成できたかなという感じです。

これまでのキャリアの中でムンジアルは手が届かないなと感じたので、現実的な目標の中ではですね」

――選手としての最後の目標を達成してもなお、東京国際柔術に出場したのはなぜだったのでしょうか。

「選手としての目標は、一個人としての目標なんです。単純に試合自体が好きなのもあるんですけど、アカデミーの代表として生徒が見ている前で戦って、背中を見せる必要があるんじゃないかと思ったんです。

僕が試合に出れば自分も出ようと思ってくれるかもしれないですし、僕が試合に出ていないのにみんなに出ろと言ってもあまり説得力もないですからね」

――Ground Impact 2015での加古拓渡戦を最後に第一線から退きましたが、アダルト部門に未練は残らないものですか。

「その試合が最後というのは、やる前から決めていたことでした。国内では全日本を4回獲ってアジアも獲ったので、それ以上タイトルを獲りたいというモチベーションもなくなったんです。

それに、アダルトでやっていくための練習量をこなすのは負担が大きいので、去年の10月を区切りにしました。どんどん若い選手も上がってきていますし、いつまでも若くいられるわけではないですからね」

――それでも、試合出場自体は続けようと。

「マスターではやろうと思っていました。ただ、やっぱり道場を起ち上げたばかりの頃はいろいろ手がかかりますし、安定するまでは出られないなと。最近は道場生も試合に出るようになってきたので、いいタイミングかなと思いました」

――アカデミーの代表という立場になって、何か心境の変化はありましたか。

「前のチームに所属していた時もチームメイトが勝ったらうれしかったですし、そこはそんなに大きな変化はないかもしれません。ただ、去年までは先輩後輩の関係だったものが、今年からは先生と生徒になったので、責任が増えた感覚はあります。やっぱり勝てなかったら自分の責任もあるので。

喜びを分かち合うという部分はあまり変わらないですけど、生徒を勝たせるために、普段のクラスをしっかりやらなければいけないという気持ちは大きいですね」

――今、道場生は何人くらいおられるのですか。

「35人くらいです。移籍組も2割くらいいますけど、一から始めた人が多いですね。今はようやく成長の兆しが見え出したかなという感じです。東京国際柔術にも3人出ていました」

――個人としての練習量は減りましたか。

「だいぶ減りました。以前と比べると半分以下ですね」

――そこにフラストレーションは?

「全然溜まらないですよ。むしろ毎日元気で健康的でいいなと(笑)。以前は限界までやっていたので体がすごく疲れていたんですけど、今はいいペースでやれています。

このくらいのペースでずっと続けられたら、ある程度強さを保てるんじゃないかなと思います」

――何歳まで試合に出続けようと思われていますか。

「その年齢になってみないとわからないので何とも言えないですけど、50歳くらいまでは出たいなという気持ちはあります。同年代の相手であればそのくらいの年齢でも普通にできるんじゃないかなと」

――金古選手は29歳から柔術を始め、30代中盤から数々のタイトルを獲得しましたから、いつまでもやれそうな印象があります。

「そうですね(笑)。ケガをしてしまってもう出られない人もいるじゃないですか。そういう人とお話をすると、試合に出られること自体がすごく幸せなんだなと感じますね。だから、出られる限りは出たいなと思います」

――最後に、今後の目標をお願いします。

「おそらく来年2月の全日本マスターズに出場すると思います。来年のワールドマスターズはまだわからないですけど、またチャレンジしたいなという気持ちはありますね。

具体的に何のタイトルを獲りたいというのはないんですけど、とにかく長く続けて試合に出続けられたらいいかなと思います。道場ももっと大きくしていきたいですし、強い選手もどんどん育てていきたいですね」

【Interview】リオデジャネイロ五輪柔道銀メダリスト&柔術黒帯、トラヴィス・スティーブンス

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travis-stevens【写真】日本で考えられている以上に米国での柔道のバリューは低い。それでいてメダリストが存在する。サッカーのように人気がなくとも実力者がいることが、スポーツ大国の凄さか (C)KEITH MILLS

昨夏に行われたリオデジャネイロ五輪、柔道81キロ級で銀メダルを獲得したトラヴィス・スティーブンス。

ロンダ・ラウジーやケイラ・ハリソン、リック・ホーンと同様にジミー・ペドロ門下生のスティーブンスは、ヘンゾ・グレイシー柔術門下、ジョン・ダナハーの下でブラジリアン柔術を学んだ黒帯柔術家でもあることは有名だ。

そんな五輪メダリストに柔術を学ぶことで柔道にどのような変化があったのか、これからの米国柔道界、今後の現役活動について尋ねた。


──米国を代表する柔道家のトラヴィス。君はどれぐらいの練習期間でブラジリアン柔術の黒帯を巻くようになったのかい?

「柔道は7歳の時に始めて、11歳の時にシリアスなケガが原因で一度辞めた時期があったんだ。で17歳の誕生日に再び稽古を初めて13年が経つ。柔術は26歳の時から練習するようになり18カ月で黒帯を巻くようになった」

──僅か1年半で!!

「実質的にトレーニングをした日数でいえばね。柔道のベースがあったからね。クラスに出るようになって数日後には紫帯になった。ただし、ケガもありクラスに出られない日も続いたし、柔術をより理解する必要はあったよ。練習できる状態の時は1日に5セッションはトレーニングに参加していた。ジョン・ダナハーのクラスに出ることで心がオープンになった。ジョンとヘンゾ・グレイシー、ヘンゾ・グレイシー・アカデミーの皆が全てを与えてくれた。

ジョンと話すと、全てのたわごとを忘れ去れることができた。そのことで本当に早く成長することが可能になったんだ。何も疑うことなく指導を受けた。あとでとやかく考える必要も全くなかったんだよ」

──そのジョン・ダナハーから学んだ柔術で、トラビスの柔道はどのような変化があったのだろうか。

「技術面ばかりじゃないけど、技術的なことでいえは時折り、柔術的な動きで油断させるとかはあるね。それよりも僕がブラジリアン柔術の黒帯だから、相手が寝技に行きたがらないという作用の方が大きいと思う。

そのことによって立ち技、投げという部分で優位に立てる。対戦相手が投げを失敗して、寝技に持ち込みたくないから慎重になるんだ。相手が慎重になれば、僕の方も余裕をもって戦うことができるようになる。そんな感じだよ」

──対戦相手は自らの動きで敗北に近づくような感覚だろうか。

「敗北への一歩かな。それはね、柔術の試合でも同じなんだ。僕が柔術トーナメントに出場すると、僕の柔道を嫌がりスタンドの展開がまずない。絶対に引き込んでくる相手に対して、もうこっちは心の準備ができているんだ」

──リオ五輪では銀メダルを獲得したけど、30歳を過ぎこれからの現役生活に関してはどのように考えているのかい。

「まだ年内(※インタビューは昨年に行われた)にヨーロピアン・クラブ・カップ決勝が引欠けているし、まぁ2016年の試合出場はそれで終わり。2017年に関しては、ファイナンシャルとにらめっこして考えるよ(笑)」

<この項、続く>

【Interview】五輪柔道銀メダル&柔術黒帯スティーブンス「寝技とドリルを取り入れる」

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travis-stevens【写真】MIZUNOからFUJIに道着が代わると、スティーブンスの動きも変わる (C)KEITH MILLS

昨夏に行われたリオデジャネイロ五輪、柔道81キロ級で銀メダルを獲得したトラヴィス・スティーブンス・インタビュー後編。

米国では柔道はコミュニティセンターで無償で習うスポーツ。柔道の指導をしても生活の糧とはならない。そんな状況をスティーブンスの師匠ジミー・ペドロは変革しようと動き始めた。

キッズ・プログラムやU23とかかわるスティーブンスは、黒帯柔術家としての技量、柔術の技術を取り入れることで米国柔道を強化させようとしている。

<トラヴィス・スティーブンス インタビューPart.01はコチラから>


――米国の柔道家の経済的な選択は少ない。でもトラヴィスは柔術でも黒帯だし、自らのアカデミーをオープンするという選択もある。競技生活を引退してからの人生プランは?

「道場ではないけど、すでにジミー・ペドロズ・柔道センターで自らのスクールは運営しているんだ。そして米国の柔道を変える試みに乗り出した。ジミーは米国の柔道指導者が指導料を得ることができるシステムを構築しようとしている。僕もカイラもそれを手伝っている」

――そこでのトラヴィスの役割はどういうものになるのかい。

「アンダー23のコーチだよ。US柔道を年代別に強化する。ただし、無償じゃない。賃金を支払ってもらうポジションにする。仕事としてね。代表チームのコーチをフルタイムの仕事にするんだ。

日本には2週間半ほど行くことになると思うけど、基本的には自宅で仕事をするよ。スクール運営のためにね。午前中はチームF.O.R.C.Eというキッズプログラムにかかわっていて、まだまだ動き始めたばかりだけど、彼らが望めば上のレベルで競技生活を送れるだけの選手に育てる。そして、彼らの引退後には指導者という道ができるようにする。今はそういう筋道がない状態だからね」

――現役としてグラップリングになるけど、EBIやADCC世界サブミッション選手権に出場するという選択は?

「それは……ある。リオ五輪から3カ月、まだ本格的なトレーニングをしていない状況だけどね。セミナーや今やるべきこと、そしてキッズプログラムの指導を優先しているからね。今の僕はキッズが夢を現実する一歩に立ち会っているから、練習時間もトーナメントに出る時間もないんだ」

――なるほど。

「でも、練習時間がとれて準備が整えばEBIやADCCに出るだけの力はある。トーナメントに出るだけの練習をするということは、他の仕事との調整が絶対的に必要になるからね。僕自身、柔道でも柔術でもかなりのことを成し遂げたという想いもあるけど、まだ戦いたいという想いも持ち続けているんだ」

――トラヴィスならではの……つまり柔術を習得している部分でジミー・ペドロの目指す米国柔道の強化にどう役立てると思っている?

「柔道家が無くしてしまった能力を再び植え付ける。全てを知るようにするんだ。そのためにブラジリアン柔術の黒帯や茶帯、いや紫帯だって構わない。柔術家とトレーニングする。寝技とドリルを練習に取り入れるんだ。柔道で勝つためにそれらの稽古を経験し、戦いの幅を広げる。

柔道と柔術の違いはルールだ。でも、それぞれのスタイルがある。柔術を取り入れたい人間は取り入れればいい。そうでない者は、それでも構わない。ただし、寝技とドリルを練習することで、その判断をするんだ。

柔道で柔術の動きをしても勝てない。柔術で柔道をやっても勝てない――なんて論争が起きれば十分だ。そういうことを考える状況を持ち込むことで、すでに柔道は強化されている。そして、否定する人間には僕はこう言うことができるんだ――『僕は結果を残した。これからも残せる。柔道で柔術家のように動くことができればね』ってね(笑)」

【Interview】あの敗北とその後──加古拓渡「『やっつけたろう』という気持ちが強すぎた」

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takuto-kako【写真】2017年GSB練習初日、9時半からの初稽古前に取材を行った(C)MMAPLANET

ムンジアルで初めてベスト8に入るなど、着実に成長の跡を見せていた加古拓渡。日本の柔術界ライトフェザー級のトップが、9月のアジア選手権で茶帯から昇格したばかりの嶋田裕太に大敗を喫した。

ストイックな姿勢で日本の柔術をリードしてきた加古が、日本人相手には見せたことのなかった姿を見せ、今後の現役生活を危ぶむ声すら聞かれたほどだ。

あの敗戦から3カ月半、今年もムンジアルへの出場権を獲得し、6月へ2017年の第一歩を踏み出した加古に──あの日の敗北とその後、これからを尋ねた。


──加古選手にはどうしても、9月のアジア選手権における嶋田裕太選手との試合のことを尋ねておかなければならないと思っていました。あの20-0の敗北、柔術人生に影響を与えるモノではなかったのかと。

「試合中はそんなことは考えていなかったのですが、映像で確かめてみると動きは悪かったですね。それには色々な要因があって、後付けの理由になってしまうのですが、周りからも言われたのは減量が厳しいということですね。

自分ではそんなつもりはなかったのですが、コンディションが悪くて、動きが悪かったと多くの人に言われたので、そうなのかなぁっていう気もするし。そういう視点で見ると、あの試合の動きは完全に悪いですね。

それと変に気合を入れ過ぎて……。嶋田君に対しても、アジア選手権に関しても。MMAPLANETの嶋田君の事前インタビューを読んで、『何だ、この野郎』っていう気持ちには正直なりました。

『やっつけてやろう』という気持ちで戦いました。いつもそうなのですが、特にそういう気持ちが強かった結果……序盤とかも『絶対に極めてやろう』と仕掛けて、動きが荒くなってしまっていましたね」

──インタビューが影響してしまっていたなら、申し訳ないです……。

「いえ、それは大会を盛り上げようとしてくれているわけですし。嶋田君に関しても意識はしていましたし。試合で当たるのも初めてで、あの大会の1年半ぐらい前に何度か練習したことがあって、その時の印象で行ってしまった。

練習は練習なのに、過小評価してしまっていた感は若干あります。あの練習をした時から1年少し、彼は伸び盛りなのに見誤っていました」

──嶋田選手自身が、加古選手の力はあんなもんじゃないと言っていました。

「う~ん、あの事前のインタビューでも『練習はやったことはあるけど、練習は練習なんで』というようなことを言っていて、その練習では結構、自分ではやっつけていた感があって……。『まだ大丈夫だ』、『まだ負けねぇぞ』という気持ちで戦ってしまいましたね」

──なるほどぉ。

shimada-vs-kako「もっと慎重にというと何ですけど、変に感情が入ってしまいました。技術的な部分でいえばハーフガードで結構パスされて。あの形はかなり自信があって、ワキを差させても、入らせてもカウンターで取れるという過信がありました。

後から試合を見直すと、いくらなんでも簡単に入らせ過ぎています。全然、ブロックもせずカウンターばかり狙っていました」

──加古選手は本来、簡単に相手を懐に入れるような選手ではなくて、慎重に戦うタイプなのに。

「ハイ。その通りです。『やっつけたろう』っていう気持ちが強すぎました。それは嶋田君だけでなく、アジア選手権に対して。そしてあの試合が初戦だったので、気持ちが逸ってしまっていました」

──ポイントを重ねられている最中はどのような心境だったのですか。

「最初にパスされた時に『アレ? パスされちゃったな。拙いな』と感じつつ、まだ大丈夫だという気持ちでした。でも、さすがに10点以上差をつけられると、もうパニックでしたね(苦笑)。

試合を諦めるとか、そういう感情ではないんです。ただパニクってしまって。そして、余計荒くなっていました。多分、コンディショグも良くないのに、それも自分で気付いていなくて……何ていうのか頭と体がリンクしていなかった。だから、自分が思ったように体は動かないし、反応もできていなかったです」

──では敗戦直後の気持ちは? もう会場では声を掛けられる雰囲気ではないし、現役を続けることはできるのか。マスターに転向するのではないかと……。

「それに近い心境には一瞬なりました。色々な感情が頭を巡りましたね。終わった直後は『ついに若手に抜かされる時が来たのか』って。そういう環境になくて、自分が上の人を越えていくという状況でずっと戦ってきたので。

国内で下の世代にやられるというのは、初めての経験でした。今まで追い抜かされたという感情を持ったことがなかったので──ついに来た。俺も歳食ったなって(苦笑)。

でも、次の日の夜には翌週の試合のエントリーをしていました。まだ気持ちの整理がついたというわけではなかったですけど。たまたま関西柔術選手権があって、締切が延長されていたのでエントリーしたんです。

あの敗北を払拭したかったんでしょうね。柔術新聞の岩井(洋一)さんや、自分の交通費を出してくれたりサポートしてくださる人と相談したら、『ぜひ、出ましょう。応援するんで』と言ってもらえて。ホント、整理はついていなかったのですが、頑張ろうっていう気持ちにさせてもらえました」

<この項、続く>

【Interview】あの敗北とその後──加古拓渡「今、1秒やるべきことを10分間続ける」

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takuto-kako【写真】柔術家のインタビューでは珍しい、普段着での撮影もさせてもらった(C)MMAPLANET

日本の柔術界を若手としてリードしてきた加古拓渡が、9月のアジア選手権で茶帯から昇格したばかりの嶋田裕太に敗れた。

それは6月のムンジアル出場に向け、ポイント獲得『ゼロ』という誤算でもあった。そして加古はとにかく、もうワン・トライと国際式のトーナメント=ソウル・オープンに出場した。

<加古拓渡インタビューPart.01はコチラから>


──翌週に関西で戦うことでクリアになることもありましたか。

「まずは試合に出てから考えようと思って、今となれば一つの負けです。過ぎたことはしょうがない。あの負けをキッカケに感情に流されないよう、感情をフラットにして戦うようにしました。

もうコイツをやっつけようとか、コイツに勝ちたいとか、一本取りたいとか、試合中には考えないようにしようと思い、今、この1秒にやるべきことをやり、それを10分間重ねていけば勝てるので。一本取れる時は取れるし、無理やり取りに行くとか考えないようになりました」

──では次に嶋田選手と戦った時は、借りを返すという気持ちは排除して戦うことになるのでしょうか。

「そうですね。対戦相手の一人、冷静に戦うことが自分のスタイルに合っていますし」

──当日減量が主流の柔術トーナメント。今後はライトフェザー級に留まるのか、フェザー級に戻すのか。どのように考えていますか。

「酷い負けからとしたから、そういう風に言われただけで。減量自体はこれまでもずっときつかったですから。でも、世界選手権(ムンジアル)で一つ勝てた。結果が良ければ、言われることもないですしね。

だから世界選手権とアジアはライトフェザー、それ以外はフェザー級とこれまでと同じように戦っていきます。日本だと減量は正直関係ない、むしろ落とした方がデメリットは大きいと思います。でも世界選手権の対戦相手の大きさを考えると、フェザー級は無理なので」

──そのムンジアルですが、アジア選手権でポイント獲得がゼロだったことは誤算だったのではないですか。

「ハイ。だから、ソウル・オープンに出場しました。あの大会は係数は1倍なのですが、これまでの貯金があるので優勝すれば世界選手権に出るだけのポイントになる。

階級別で取りこぼしても、無差別級で2位に入ればそれでも良かったので。アジアで優勝すればソウル・オープンに出ることなかったですが、アジア2位でも出ようと元々考えていました。

ただし、アジアが終わった直後は心が折れていたので、ソウル・オープンに出てどうこうというのは頭にはならなかったです。1週間後の大会に出て、吹っ切れたわけじゃないですが、もうワントライしようという気持ちになれたんです」

──結果はフェザー級で優勝を勝ち取ることができました。ソウル・オープンこそ、落とせないという気持ちにはらなかったですか。

「ありました(笑)。だから勝った時はホッとしました。決勝の相手は大塚(博明)君でした。初戦はシセロ・コスタのところでやっていたという韓国人選手で。どういう選手か分からなかったですけど、チェ・ワンキが出ていたら厳しくなると思っていたのですが、出てなかったです」

──アジアでイザッキ・パイヴァに勝った選手ですね。物凄い筋肉の(笑)。

「2014年のアジアではライトフェザー級に出ていて山田(秀之)君にスト―リングが何かで負けたのですが、強い選手です。その後、ライト級とかでもやっていますしね」

──とにかくソウルでムンジアル出場権を得た。この点に関しては、どのような心境でしょうか。

「早いタイミングで決まったので、今後のスケジュールが組み立てやすいのは良かったです。本当はアジアで決めたかったのですが」

──6月の本番に向けて、どのようなスケジューリングを考えていますか。

「さすがに5月にトーナメントに出ることはないですが、4月までは月に一度は試合に出ていこうと思っています」

──ヨーロピアンやパン柔術は?

「海外でなく国内で試合をしようと思っています。どこでというのは決めていないですが、ジャパニーズ・ナショナルはポイントを取ることができる大会ですし、出場することになるでしょうね。

最後のポイントを狙って、必死になる選手もいるはずですし、そこで冷静に感情に流されずに試合をしようと思います(笑)。アジアでの負けを糧とするためにも、そういう風に戦えるよう心がけます」

<この項、続く>

【Interview】あの敗北とその後──加古拓渡「最終日のマットで試合をする。できれば2試合」

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Takuto Kako【写真】再び、この強い意志が宿った表情で加古はムンジアルに挑む(C)MMAPLANET

昨年9月のアジア選手権で、茶帯から昇格したばかりの嶋田裕太に敗れた加古拓渡インタビュー最終回。

日本の柔術界を若手としてリードしてきた加古の転機となった敗北から、ソウル・オープンを経て今年も最高峰ムンジアルに挑む。

そんな加古にノーギ柔術を含め、柔術観に通じる話をしてもらい、ムンジアルへの意気込みを訊いた。

<加古拓渡インタビューPart.01はコチラから>
<加古拓渡インタビューPart.02はコチラから>


──それがアジア選手権で学んだことだと。

「あそこをキッカケに試合への心構えが少し変わりました。ただ、そこも難しいところで。年末にチャールズ・ガスパーと戦った時に変に冷静になり過ぎてスコアを考えていると、50/50で負けてしまって……。

攻める時にはガッと行かないといけないですし、その辺りは判断が難しいところもあります」

──自分がいうところの草食主義ファイトですね(笑)。

「ハハハハ。変に計算し過ぎて……。もちろん、計算通りに行けば勝てるのですが、そういうものじゃないですし。トップキープのはずが返されて、逆にキープされたり。そういう風にならないように気持ちの持ち方の調整が大切になってきます」

──ところで話が変るのですが、加古選手はグラップリングやノーギに対してはどのような捉え方をしているのですか。

「僕はノーギは全くやらないです。柔術への考え方ということではなくて、練習時間も限られてきていますし、そのうちの一つをノーギに費やすことは現時点では勿体ないと感じています。

もう一点、じゃあ誰とノーギの練習をするのかってこともあります。現状、僕の回りにはノーギのスペシャリストのような人がいません。普段、道着を着ている人とノーギでやることも良い面はあるのでしょうが、お互い慣れないことをやっているようなもので」

──確かにその通りですね。

「1日に2回、3回と練習ができるなら、週に2日や3日は一つをノーギに当てたいですけどね」

──そういう事情もあってか、年末のRIZINグラップリングでもノーギ柔術ではなくて、打撃のない極めっこMMA的な技術体系でした。ADCCのようなサブミッションレスリングにはなっていないのは、そのあたりが要因となっているのかもしれないですね。

「ノーギは日本では厳しいですね。良くも悪くも、MMAグラップリング。特にこの間のトーナメントはそうでした」

──ポジショニング的には嶋田選手は2試合目で戦った紫帯の佐野貴文選手以外は圧倒してしまいました。ノーギが強ければ、道着も強いという定義が存在するなら、日本のグラップリングは本当に危機的状況で、それが道着有りにも影響を及ぼすと感じました。あくまでも柔術側の見方ですが。

「スタイルも関係しますしね、柔術家にしても。それとヒールフックがある試合はなかなか出ていかないことも考えられます。ヒールができる、できないではなくて、リスクが高すぎます。

ノーギに出て、ヒザをやって全てを棒に振る可能性がある。IBJJFの世界選手権にない技でケガをすることは、やはりリスクが高いと言わざるを得ないです」

──バンドがない野球、ヘディングがないサッカーはないのですが、柔術は色々なルールや概念が存在しており、そこがまた面白いです。そして加古選手の目標は絶対的にムンジアルにあると。

「ハイ。去年はベスト8、なので今年もベスト8を目指すと言いつつ、できれば3位を狙う……高望みはせず、現実的に考えてベスト8。ムンジアルはどんどんレベルが高くなって、人数も増えるだろうし1度勝って2日目ではなく、2回、3回と勝って2日目に残れるようになっていくと思います。

同じベスト8でもハードルは高くなっている。なので、もう一度最終日のマットで試合をする。できれば2試合したいです」

──しつこいようですが、嶋田選手にリベンジはしたくないですか。

「したいです。したいですけど、だからといって彼を追いかけるという話ではないです。またそのうち当たるだろうし、下手をするとムンジアルの初戦で当たるかもしれない(笑)」

──それは見たくないです。海外で日本人対決が早々に実現するのは……。

「黒帯になってからはムンジアルで日本人対決はないですが、茶帯では経験しています。平田(勝裕)さんと当たったことがあって……、面識があったわけじゃないのですが、やっぱり切ないものがありました。

ムンジアルでなくても、ソウル・オープンでも決勝で大塚君と当たって、やっぱり切ないんですよ……。でも、ブラジル人は常にブラジル人と戦っていますしね。しょうがないことなんです。

嶋田選手に関しては、僕もまだしばらく選手を続けるつもりなので、すぐでなくてもまた機会が巡って来るはずです」

──押忍、ありがとうございました。


【EJJC2017】さぁヨーロピアン開幕。ルースターに芝本、混戦Lフェザーはジョアオ、ムスメシ&アイザック

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Koji Shibamoto【写真】6月のムンジアルへ向け、柔術家たちの2017年がリスボンから始まる (C)MMAPLANET

今週の17日(現地時間・火曜)から22日(同・日曜)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催されている。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会の見所を、3回に分けてお届けしたい。まずは、日本人選手も登場する軽量級3階級から見てみよう。


【ルースター級】
大会3連覇中のカイオ・テハが今年はマスターの部にエントリーしたことで、各選手に一挙にチャンスが広がった最軽量級。一番の注目選手は、昨年テハと決勝で対戦し、互角のモダン柔術戦を展開した上で終盤に投げで攻勢に出て、残り数秒までどちらが勝つか全く分からないほどの接戦を演じてみせた芝本幸司(トライフォース)だ。

昨年はその後の世界柔術でもテハに屈し、アジア選手権では橋本知之に敗れて日本最強の座をも譲ってしまった芝本。世界制覇の悲願を果たすために、超強豪の名が見当たらないこの大会はなんとしても優勝したいところだ。

同階級には、以前芝本に一本勝ちしたことのあるニコラ・ギャラール(トゥーロンBJJ)に加え日本から戸所誠哲(パレストラ岐阜)もエントリーしている。

Joao【ライトフェザー級】
世界的強豪がひしめき、本年度もっとも熾烈な争いが繰り広げられそうなのがこの階級だ。真っ先に目に付くのが、昨年優勝のジョアオ・ミヤオ(PSLPBシセロ・コスタ)のエントリー。昨年優勝分け合った同門のイアゴ・シウバとともに、2年連続のクローズアウトを狙う。

Musumeci vs Doederleinしかし今年は、そこに大きな壁が立ちはだかることとなった。ミヤオ・キラーとして名を馳せるマイキー・ムスメシ(ブラザCTA)だ。ミヤオ兄弟の得意なモダン柔術のポイントゲームにおいて、ことごとく最後に彼らを出し抜いて勝利するムスメシは、なんとジョアオ相手にギ、ノーギ合わせて4戦全勝。今回ジョアオは、この天敵を打ち破る策を見せることができるだろうか。

さらに、昨年の世界柔術にてムスメシを倒してみせた新星アイザック・ドーダーラインと、大ベテランの元世界王者のガブリエル・モラエスのアリアンシ勢もエントリー。世界選手権の行方を占う上でも、見逃せない戦いが次々と行われることになる。

cobrinha【フェザー級】
この階級の嬉しい驚きは、何度も世界王者に輝いたレジェンド、コブリーニャことフーベンス・シャーレスの名があること。37歳にして世界トップの実力を維持し続ける鉄人は、米国若手のジャンニ・グリッポやベテランのエスキジートことカーロス・ホランダとともにアリアンシ勢による制覇を狙う。

このアリアンシ勢に対抗する有力候補には、イサッキ・パイヴァ(サイキョー)、チアゴ・ブラボー(ブラザCTA)らの名前が挙げられる。

【EJJC2017】ライト級、岩崎正寛×アンドレ・マーシオは実現するか。ミドル級にADCC世界王者見参

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Iwasaki【写真】岩崎にとっては異様に長いインターバルとレフェリーのジャッジ、首を傾けたくなるような出来事が続いたマーシオ・アンドレ戦から2年。再戦は実現するか (C)MMAPLANET

今週の17日(現地時間・火曜)から22日(同・日曜)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催されている。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会の見所を、3回に分けてお届けしたい。第2回は中量級3階級の見どころとなる。


Andre【ライト級】
本命は、昨年の世界選手権にてコブリーニャからパスガードを奪い勝利し、世界を驚かせてみせたマーシオ・アンドレ(ノヴァ・ウニオン)であることは間違いない。世界選手権の階級別ではフェザー級で出場するアンドレだが、しばしば無差別級にも進出し、重量級の世界的強豪と互角にやり合う底知れぬ地力の持ち主だ。

今回、打倒アンドレをぜひ期待したいのが、一昨年の本大会フェザー級にてアンドレと対戦し、レフェリー判定で敗れたものの互角の攻防を展開した日本の岩崎正寛(カルペディウム)だ。昨年はニューヨーク・オープンにて強豪のマンシャー・ケラを倒して準優勝に輝き、その実力が世界レベルであることを証明した岩崎。必殺のハーフガードからスイープと、レスリングを取り入れたことで完成度の挙がったテイクダウンと盤石のトップゲームをもって、ムンジアルに向けて幸先の良いスタートを切れるか。アンドレ戦は世界との格好の物差しとなる。

さらに同階級には、MMAでも本拠拠点のホドリゴ・カポラル、インヴァーテッド・ガードでも有名なアンドリス・ブルノフスキスというアトス勢も参戦している。

Ramos【ミドル級】
最注目は、15年のADCC世界大会を制したダヴィ・ハモス(アトス)。ルーカス・レプリを飛びつき(飛びこみ?)十字で一瞬で仕留めて世界を驚嘆させてみせた極め力を、道着ありの舞台でも発揮できるか。

同階級ではジェイミー・カヌート(GFチーム)、マルセロ・ティノコ(アリアンシ)といった強豪もエントリーしている注目が集まる。

Calasans【ミディアムヘビー級】
15年に世界選手権のミドル級と、ADCC無差別級、ギありとノーギ双方の世界最高峰を制覇するという偉業を成し遂げたクラウジオ・カラザンス(アトス)が大本命。ムンジアル出場権を手にしているなかで、アジア選手権につきヨーロピアンにも出場と実戦トレを行っている。昨年の世界柔術では、新星ガブリエル・アルジェスの膝十字に不覚を取った元世界王者の──2017年のスタートに注目したい。

カラザンスの対抗馬としては、昨年ホムロ・バハウに敗れて3位となったパトリック・ガウジオ(GFチーム)らが挙げられよう。その他若手やヨーロッパ勢の中から、大物食いを果たして世界を驚かせる選手が現れることに期待したい。

【EJJC2017】ムンジアル5連続&3階級制覇のレアンドロ・ロがヘビー級に出場!!

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Lo【写真】軽量、中量級と比較すると顔触れが寂しい重量級にあってレアンドロ・ロから目は話せない (C)MMAPLANET

17日(現地時間・火曜)に開幕し、22日(同・日曜)までポルトガルはリスボンのパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで行われているIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会の見所、最終回が3回に分けてお届けしたい。第2回は中量級3階級の見どころとなる。

【ヘビー級】
ライト、ミドル、ミディアムヘビーとムンジアル3階級制覇&5年連続の世界王者、柔術界のパウンド・フォー・パウンド最強の有力候補とも言えるレアンドロ・ロ(N’sブラザーフッド)がついにこの階級にエントリー。必殺のニースライド・パスと難攻不落のオープンガード、クラシカル形から最新形までなんでもありのスイープを武器に、無差別級でも無類の強さを発揮しているロだけに、ここでも当然大本命だ。このヨーロピアンは、前人未到の世界4階級制覇への布石となるか。

エントリーリストを見る限り、ロの対抗馬となるような名前は見当たらないというのが正直なところ。コブリーニャから黒帯を受けたタナー・ライス(ソウルファイターズ)らの躍進に期待したい。

【スーパーヘビー級】
注目は15年の茶帯の世界王者にして、同年のノーギ・ワールズ黒帯の部で準優勝に輝いたモハメッド・アリー(ロイド・アーヴィン)。昨年は大きなタイトルは取れず、黒帯世界最高峰の壁の高さを経験したこの若者が、2017を飛躍の年とするためにも、この大会は重要となる。

そこに立ちはだかるのが、この大会長年の常連にして、15年の覇者のラガルトことルシオ・ロドリゲス(グレイシー・バッハ)だ。ガンを克服したことで多くの者に力を与えるベテランが、台頭する若手を相手に存在感を見せつけることができるだろうか。

【ウルトラヘビー級】
一昨年の本大会王者イゴール・シウバと、やはり一昨年の世界柔術にて、世界最強の柔術家ブシェシャことヒカルド・アルメイダに土をつけて世界を驚かせたヒカルド・エヴァンゲリスタのGFチーム勢がクローズアウトを狙う。この二人に対抗するのは、昨年のノーギ・ワールズ準優勝のグスタヴォ・ディアス(ヒベイロ)か。


【EJJC2017】ムンジアル制覇へ、芝本の2017年はヨーロピアン優勝からスタート

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Shibamoto【写真】悲願達成へ。まずは最高の形で2017年のスタートを切った芝本(C)IBJJF

17日(現地時間・火曜)から22日(同・日曜)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦したこの大会、レビュー1回目はまず、日本人にとっては最も世界に近い階級である最軽量ルースター級の模様をお届けしたい。

昨年の本大会決勝にて、帝王カイオ・テハを限りなく追いつめての準優勝に終わった芝本幸司(トライフォース)は1回戦で、昨年茶帯世界2位のエドゥアウド・バルボーザ(GFチーム)と対戦。ダブルガードから上を選択したバルボーザに対して、ラッソーで崩してのスイープや、パス狙いに乗じて上になるなどして4-2とリード。その後もベリンボロからバックに回りかけるなど、危なげない試合運びで初戦を突破した。

芝本の2回戦の相手は、昨年本大会3位に輝いているフランスのヴァンサン・グエン(アトス)。お互い引き込み合う展開から、あえて上を選択してアドバンテージを得た芝本は、ダブルガードの攻防やアキレス狙いを交えつつ、重心の低いパスを仕掛けるなど安定したトップゲームを展開してアドバンテージを追加していった。

終盤は内回りを狙うグエンに対し、上から体重を掛けてスタックしてその動きを封じた芝本がポイントは両者0ながらもアドバンテージ2差を付けて、力の差を見せて勝利した。

<ルースター級決勝/10分1R>
芝本幸司(日本)
Def. by 6-2
ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)

決勝で芝本を待っていたのは、昨年も準決勝で芝本と当たり、僅差で敗れて3位に入賞したホドネイ・バルボーザ(ジィニス柔術)。今回は1回戦で日本の戸所誠哲(パラエストラ岐阜)と対戦したバルボーザは、クローズドガードから戸所の裾を引き出して背中に回して持ち、そのグリップを利用してバックに登っての襟絞めで見事な一本勝ち。準決勝も勝ち抜いて芝本とのリマッチにこぎ着けた。

ダブルガードの攻防で開始したこの決勝戦。2分過ぎ、バルボーザのアキレス腱固め狙いに対し、芝本がベリンボロで対抗すると両者の体は場外へ。これが芝本の場外逃亡と判定されたのか、レフェリーがバルボーザに2点を宣告。力の拮抗した者同士によるモダン柔術戦においては、まさに痛恨といえる失点を芝本は許してしまった。

スタンド再開後、芝本はあえて上を選択。バルボーザのディープハーフガードに対して、その頭をまたいで足を抜きに掛かりトップから安定した対処を見せるものの、なかなかポイントには至らず時間が過ぎていった。

残り3分を切ったところで、リバースハーフ上の状態を取っていた芝本。バルボーザにアームロックを仕掛け、その腕を伸ばしかけてアドバンテージを獲得してみせた。それを凌いだバルボーザがアキレス腱固めを狙ったところに、芝本はベリンボロを合わせる。そこに対応して、逆にバルボーザがバックを取りにきたところで、芝本は体を翻して反対にバックに! そのまま両足フックを完成させ、逆転の4点を獲得してみせた。

場外ブレイクを経た再開後に引き込んだ芝本は、バルボーザの一か八かの跳び十字狙いを背後に倒れ込んで防ぐと、終了寸前にシットアップして上になり2点追加。6-2の勝利をもって、12年以来5年振り二度目のヨーロピアン王者に返り咲いた。

3連覇中のテハのマスター出場、当初エントリーしていたマイキー・ムスメシの階級変更があり、いわゆる超強豪が不在となった今年のヨーロピアン最軽量級。

芝本は一回戦では下からのスイープやベリンボロゲームの強さを、準決勝ではトップゲームの安定感を、そして決勝では不運な形で先制点を失いながらも、スクランブルを制して逆転のビッグポイントを奪って勝負強さを見せつけた。世界制覇を目標に掲げる以上、「優勝が絶対」という状況となった今大会を、強敵3人に完勝して制覇したことの意義は大きい。2017年の悲願達成に向けて、芝本は幸先の良いスタートを切ってみせた。


■リザルト

【ルースター級】
優勝 芝本幸司(日本)
準優勝 ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)
3位 ギリャルメ・モンテネグロ(ブラジル)
3位 ヴァンサン・グエン(フランス)

【EJJC2017】ライトフェザー級は新鋭イアゴ、ベテラン=モラエスを倒し、ムスメシが頂点に

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Musumeci【写真】三強揃うルースター、強豪揃いのなかで頭一つ抜けたパウロ・ミヤオがいるライトフェザー級。ヨーロピアンを制したムスメシはどちらで世界を狙うのだろうか(C)IBJJF

17日(現地時間・火)から22日(同・日)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦した今大会。レビュー2回目は、ジョアオ・ミヤオやマイキー・ムスメシ等、世界的強豪がこぞって出場した最激戦区、ライトフェザー級の模様をお届けしたい。

<ライトフェザー級準決勝/10分1R>
ガブリエル・モラエス(ブラジル)
Def. by 5-4
ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)

昨年優勝のミヤオは、一回戦を順調に一本勝ちで突破。準決勝にて、04年と13年と2度に渡り世界王者に輝いた大ベテラン、ガブリエル・モラエスと対戦した。

序盤のダブルガードの攻防から上を選択し、ミヤオに内回りで上を取られて2点を献上したモラエスは、その後ダブルガードの攻防から体を起こして同点にすると、その後は両足かつぎ等を用いてミヤオに低く体重をかけてゆく戦法に。対するミヤオも距離を作ってのベリンボロでモラエスを返しかけるが、モラエスはすぐに立ち上がってポイントは回避する。

やがてミヤオのクローズドガードの中に入ったモラエスは、低く胸を合わせてミヤオの道着の裾を引き出すと、それをミヤオの背中越し回して両手で掴んで体重を掛け、ミヤオの体の動きを止める。危険を感じたのか、ミヤオはクロスチョークを仕掛けるなど抵抗するが、モラエスはしっかりとアゴを引いて防御。

やがて、背中越しに裾を掴んでいる左手のグリップをキープしているモラエスは、体重をかけたまま左ヒザを立てる。体を丸め、自分の左ヒザと左ヒジがくっつくような体勢で大きな「塊」を作ったモラエスは、それを用いてミヤオの右足を押しつぶすように前進、左ヒザでミヤオの足を超えると、すぐに左足を外に伸ばし次には右ヒザもミヤオの右足を完全に超えてサイドを取ることに成功する。 レフェリーが3本の指を高々と上げて、パスガードの完遂を宣言。なんと大ベテランのモラエスが、難攻不落のミヤオのガードを突破してみせたのだった。

5-2でリードされたミヤオは、すぐにハーフガードに戻し、やがてクローズドの体勢に。するとモラエスは先ほどと同じようにミヤオの裾を背中腰に掴み、漬物石のごとく体を丸めて体重をかけ、その動きを封じる。ミヤオはクロスチョークを狙うが、モラエスは動かず、時間が過ぎてゆく。やがて膠着によってミヤオに2点が与えられるが、それでもモラエスは動こうとしない

残り時間が30秒を切り、ミヤオが必死で動いて隙間を作ろうと試みているところで、モラエスは前回と同じパスを仕掛け、ミヤオの右足を再び突破! 今度はすぐにモラエスの右足を掴み、すかさずハーフに戻してみせたミヤオだが、ここでタイムアップに。

ミヤオ得意のモダン柔術戦で渡り合ったモラエスが、後半は自分の体型の特徴を活かしたパス攻撃で、あのミヤオのガードを攻略するという離れ業に成功。ジョアオ・ミヤオが試合でパスガードをされたのは、黒帯を巻いてからは初めてのことだという(最後にパスガードされた時は茶帯無差別級の試合で、相手はヘビー級だったようだ)。

モダン柔術というものが存在していなかった14年前に世界を初制覇したベテランが、新世代のもたらした技術進化にしっかり対応した上で、その上を行く──全ての柔術競技者に勇気を与えるような、モラエスの快挙だった。

<ライトフェザー級決勝/10分1R>
マイキー・ムスメシ(米国)
Def. by 5-4
ガブリエル・モラエス(ブラジル)

準決勝で快挙を成し遂げたモラエスを決勝で待っていたのは、ミヤオよりさらに新世代の旗手のムスメシ。ミヤオ・キラーとしても名を馳せるこの若者は、準決勝ではミヤオの同門のイアゴ・シウバに競り勝っての決勝進出だ。ちなみにそのシウバは、初戦でこれまた新世代を代表する強豪、アイザック・ドーダーラインとの激闘を制していた。

開始後しばらく、両者下を譲らないモダン柔術戦が続いたこの試合。やがて上を選択したモラエスは、ミヤオのガードを突破したのと同じ要領で低く体重を預け、ムスメシの裾を引き出して背中越しに取り、膝で右足を押しつぶしながら突破するパスガードに。しかしここでムスメシは、自らの右足を手で抱えて上のほうに引き寄せることでモラエスに超えさせず。ミヤオのガードを陥落させたパスを、見事に防いでみせたのだった。

やがて距離を作ることに成功したムスメシは、モラエスの右足を引き出して揺さぶるなど下からの攻撃を開始。右足こそ戻すことに成功したモラエスだが、ムスメシは後転しながらモラエスを前方に崩すと、そのまま50/50をロックオン。そして上を取って2点先制。終盤にて見事にポイントを稼いでみせた。下になったモラエスも懸命にムスメシを崩しにかかるが、時すでに遅し。2-0でムスメシがヨーロピアン初戴冠を果たしたのだった。

ミヤオ兄弟をことごとくアウトスマートし、若くしてモダン柔術におけるポイントゲームの達人ぶりを見せつけているムスメシ。大ベテランのモラエスが相手でも、まんまと勝負を自分の専門分野に持ち込み、翻弄しての優勝だった。

さらに見逃せないのは、ジョアオのガードを攻略したモラエスの膝割りパスを見事に防ぎ、自分の得意な形を作ったその技量。ポイント争い云々を抜きにして、柔術家として超一級品の自力を持つ天才がルースター級かライトフェザー級、どちらの階級に出てくるのか。ムスメシの存在は台風の目を越えた本命になりつつあることは間違いない。


■リザルト

【ライトフェザー級】
優勝 マイキー・ムスメシ(米国)
準優勝 ガブリエル・モラエス(ブラジル)
3位 イアゴ・ジョージ(ブラジル)
3位 ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)

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