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【EJJC2017】岩崎正寛、ムンジへの期待膨らむライト級3位=表彰台。フェザー級はコブリーニャが優勝

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Iwasaki in Podium【写真】残念なことにオフィシャル・アルバムには岩崎が目を瞑っている表彰台の写真しかなかったのだが、そんなことは目を瞑っても構わない──今後への期待が高まるヨーロピアンだった (C)IBJJF

17日(現地時間・火)から22日(同・日)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦した今大会。レビュー3回目となる今回は、ライト級の模様を日本の岩崎正寛の活躍を中心にお届けしたい。


日本期待の岩崎正寛は1回戦でフランスのチボー・オリバーと対戦。引き込んで得意のディープハーフガードを作ると、相手の道着の裾を引き出して掴み、さらに帯を掴んで勢いよく反転してのスイープで先制。その後は重心を低くした盤石のベースからパスのプレッシャーを掛けつつ、上をキープして勝利した。

2回戦でポーランドのカスパー・ロットと当たった岩崎は、ここでもやはり引き込んでハーフを作る。腰を切ったロットが脇をすくい、足を抜きにきたタイミングで反転し、そのまま上を取り切って2点先取。その後安定したトップゲームを展開した岩崎は、横に動いてのパスでサイドを取りかけるなどアドバンテージを重ねて勝利。準決勝進出を果たした。

<ライト級準決勝/10分1R>
ルアン・カルバーリョ(ブラジル)
Def. by 三角絞め
岩崎正寛(日本)

準決勝で岩崎を待っていたのはルアン・カルバーリョ。昨年のワールドプロで世界最強のライト級柔術家のルーカス・レプリ相手に大健闘。不可解な裁定だったとはいえ、レフェリー判定勝ちを収めた選手だ。

スタンドの攻防から始まったこの試合。まずは奇麗なダブルレッグを仕掛けた岩崎が、腰の強さを活かして粘るカルバーリョを一瞬倒してアドバンテージを先制。その後再びスタンドに戻ると、袖と襟を掴んで組み合う両者。崩し合いが続くなか、カルバーリョがヒザを付きながら岩崎を下に崩しての投げを放つと、岩崎はたまらず横転。カルバーリョが2点を先取した。

なんとか脚を絡めてハーフを作った岩崎に対し、カルバーリョは巧みに上半身を離して距離を作り、ニースライド・パスの体勢に。そのままヒザを抜きにかかるが、カルバーリョの裾を引き出して持った岩崎も立ち上がり、倒そうと押し込むが場外に。試合はまたスタンドに戻った。

両者が組み合うと、今度はカルバーリョの方が引き込んでクローズドガードを取る。ここから岩崎の右腕を深く抱えて、ハイガードの仕掛けを作る。岩崎は腰を上げ、体重をかけてスタックを試みるが、カルバーリョは(抱えた右腕ではなく)左腕に腕十字を仕掛ける。そして次の瞬間、防御しようとして岩崎が引いた左腕を右足で超えての三角ロックをカルバーリョが完成させる。

今度は右腕に三角十字を狙うカルバーリョは、前方に体重を掛けて防ごうとした岩崎を、後転しながら崩して三角マウントの体勢に。流した岩崎の右腕に上から体重をかけてタップを奪ってみせた。

この後カルバーリョは、ノヴァ・ウニオンの同門にして本命のマーシオ・アンドレと優勝をシェア。見事な柔道技と──レプリにさえスイープを許さなかった──ハーフガードへの対処、そして流れるように右、左、右と狙いを変えての腕狙いと三角のコンビネーションで、岩崎に一本という形で、世界の頂上の高さを見せつける形となった。

しかし、この岩崎の国際大会における中量級でのメダル獲得は、日本人としてはまぎれもない快挙といって良いだろう。最初の2戦で岩崎は、ハーフガードからスイープ&トップキープという勝利パターンが国際大会でも通用することを改めて見せつけた。

そして、その2試合で見せたハーフからの力強い反転と上を取りきる動きは、かねてから取り組んでいるレスリングとフィジカルの向上が、トップゲームを強くするだけでなく、岩崎のスクランブル力の向上にもつながり、もともと得意だったハーフガードスイープの威力を増していることを示していた。

敗れた準決勝でも、カルバーリョから先制のアドバンテージを取ったダブルレッグ、さらにニースライドを防ぎ立ち上がってみせたところに、その進化が如実に表れている。本人の想いは別として、第3者の立場から検証すれば、ムンジアルへ向けてさらなる可能性を感じさせた──希望に溢れたヨーロピアン銅メダル戴冠だったといえるのではないだろうか。

なおフェザー級ではコブリーニャことフーベンス・シャーレスが、ジャンニ・グリッポとのアリアンシ同門対決を制して優勝に輝き、38歳にしてレジェンド健在を示している。

■リザルト

【フェザー級】
優勝 フーベンス・シャーレス(ブラジル)
準優勝 ジャンニ・グリッポ(米国)
3位 ガブリエル・マランゴーニ(ブラジル)
3位 イサッキ・パイヴァ(ブラジル)

【ライト級】
優勝 マーシオ・アンドレ(ブラジル)
準優勝 ルアン・カルバーリョ(ブラジル)
3位 アンドリス・ブルノフスキス(米国)
3位 岩崎正寛(日本)


【EJJC2017】世界5連覇&3階級制覇=怪物レアンドロ・ロ、欧州ではヘビー級と無差別級で優勝

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Lo【写真】アジア2冠のカラザンスを無差別級決勝で破り、レアンドロ・ロがヨーロッパ2冠に(C)IBJJF

17日(現地時間・火)から22日(同・日)にかけて、ポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦した今大会。レビュー最終回は、階級を超えた世界王者対決が実現した無差別級の模様を中心にお届けしたい。


ライト級、ミドル級、ミディアムヘビー級と世界3階級制覇&5連覇を成し遂げたレアンドロ・ロは、ヨーロピアンでついにヘビー級にエントリー。決勝でタナー・ライスを絞めで一蹴して優勝を果たした。さらに無差別級でも勝ち進んだロは、準決勝でスーパーヘビー級の新星モハメッド・アリーと対戦。アリーのパワフルなスイープを抜群のボディバランスで耐えると、伝家の宝刀──両足のズボンを掴んで捌くトリアーダ・パス一閃。迅速の体捌きでアリーの頭を超えて270度動いて抑え込み、見事に決勝進出を決めた。

決勝戦でロを待っていたのは、15年に世界柔術ミドル級とADCC無差別級にて、組技世界二大大会制覇を成し遂げ、頻繁に来日し昨年のアジアでもミッドヘビー級&無差別を制したクラウジオ・カラザンスだ。この両者は昨年のアブダビ・ワールドプロ大会85キロ以下級の決勝でも当たっており、どちらも一歩も譲らない激闘の末、レフェリー判定でロが勝利を収めている。そしてこのヨーロピアンの舞台で、再び中重量級の頂上対決が再び実現した──

<無差別級決勝/10分1R>
レアンドロ・ロ(ブラジル)
Def. by 4-0
クラウジオ・カラザンス(ブラジル)

気合い十分のカラザンスは、両襟を取って背負いのフェイント等で崩しに掛かるが、ロも素早く反応。襟を取った状態からレベルチェンジしてカカトを掴んでのタックルを狙うなど、白熱の立ち技の攻防が続く。

やがて引き込んだのはロ。ラッソーガード、片襟片袖、クローズドガード等から仕掛けるが、カラザンスは強固なバランスを保って崩れない。

距離を取って立ったカラザンス。対して、シッティングから右手で片襟を取ったロは、警戒して腰を引こうとするカラザンスの体重移動のバランスを体で感じるかのようにフェイントをかけながら、スーッと腰を左側に移動させてスペースを作るや否やカラードラッグ。 

まさに芸術的と呼ぶべきタイミングで、ものの見事にカラザンスを前方に崩したロは、そのまま後転するように上を取ってみせた。カラザンスは下になりながらもヒザ十字を狙うが、ロがそれに対処しているところで場外ブレイク。ロが見事に2点を先取してみせた。

試合は残り4分半のところでスタンドで再開。両者ともに警戒してペナルティを重ねるなか、再び引き込んだのはロ。今度はカラザンスの左足に絡んでデラヒーバガードを作る。残り2分過ぎ、ロは再び後転しながら、カラザンスを前方に崩してのスイープに成功する。下になったカラザンスは、懸命に動いてハーフから脇を刺す者の、世界屈指ボディバランスを誇るロは、巧みに腰を切って上をキープ。さらに絡まれた脚を抜きにかかったところで時間切れを迎えた。

去年に続き実現した中重量級頂上対決は、またしてもロに凱歌が上がることに。現在世界最高の柔術家の座を、改めて揺るぎなきものとしてみせた。

それにしても感嘆すべきは、ロが最初に決めたカラードラッグ・スイープの見事さだ。それは極めて単純な原理の動きのなかに、鍛え抜かれた身体能力、相手の体重移動を感じ取る繊細さと反応速度、腰で地を這うがごとき全く無駄のない身体の運用の全てが詰まった、至高のアートと呼びたくなるものであった。

■リザルト

【ミドル級】
優勝 マルコス・ティノコ(ブラジル)
準優勝 アレク・ボールディング(米国)
3位 イサッキ・バイーズ(ブラジル)
3位 ジェイミー・カヌート(ブラジル)

【ミディアムヘビー級】
優勝 ホドリゴ・ファジャード(ブラジル)
準優勝 ホーランド・モンテイロ(ブラジル)
3位 マテウス・ソウザ(ブラジル)
3位 ヴィニシウス・カルバーリョ(ブラジル)

【ヘビー級】
優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
準優勝 タナー・ライス(米国)
3位 アダム・ワジンスキー(ポーランド)
3位 ユハ・ユーホリン(フィンランド)

【スーパーヘビー級】
優勝 モハメッド・アリー(ブラジル)
準優勝 ルシオ・ロドリゲス(ブラジル)
3位 クリストファー・ボウ(アイルランド)
3位 ヴィトー・マルチンス(ブラジル)

【無差別級】
優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
準優勝 クラウジオ・カラザンス(ブラジル)
3位 モハメッド・アリー(ブラジル)
3位 マニュエル・フィリョ(ブラジル)

【EJJC2017】ルースター級制覇、芝本幸司 「考えてから動いていたのでは遅い」

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Koji Shibamoto【写真】ヨーロピアン優勝をじっくりと振り返ってくれた芝本。彼のみぞ知る、心理面は耳を傾けているだけでもヒリヒリした情景が浮かんでくる (C)TSUBASA ITO

1月22日、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで開催されていたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権──最終日。黒帯ルースター級を制した芝本幸司に話を訊いた。
Text by Tsubasa Ito


――ヨーロピアン選手権優勝、おめでとうございます。2012年以来、2度目の制覇となりました。

「ありがとうございます。今回は今までにないくらい、納得のいく試合ができました。私としては優勝したことよりも、3試合しっかり勝ち切ったことに価値があると思っています」

――初戦はガードから、準決勝はトップから、決勝はリードされた展開と、それぞれ違う試合展開になりました。それぞれの局面に対応し切れたことも大きいですか。

「そうですね。こればかりは相手にもよりますし、試合が始まってみないとどういう展開になるかはわからないので狙っていたわけではないんですけど、結果的に3試合とも違うタイプの試合ができて、自分の実力を確認できたという意味ですごくよかったですね」

――昨年のヨーロピアン決勝戦で、僅差の激闘を繰り広げたカイオ・テハ選手はマスターにエントリーしたため、今回アダルトには出場しませんでした。世界選手権前に戦っておきたかったという気持ちは。

「特にないですね。誰が出てくるかは私がコントロールできることではないので、たとえ誰が出ていようと、いまいと、1回戦で誰と当たろうと、そのトーナメントを最後まで勝ち切ることが重要だと思っています。

その中で今回は、カイオやブルーノ(・マルファシーニ)やジョアオ(・ミヤオ)といった世界のトップ選手が出ていなかったので、そういった意味ではきっちり結果を出したいという気持ちはもちろんありました」

――負けられない気持ちが大きかったと。

「優勝よりも、とにかく勝ち切ることが私にとっての結果だったんです。中でもやはり決勝戦ですね。ポイントをリードされて追う展開になったんですけど、相手は違ってもやはり、勝ち切れなかった去年のカイオ戦が脳裏をよぎりました。

去年はラスト17秒、勝つか負けるかのところで自分は負ける側になってしまったんですよね。同じヨーロッパ、同じ決勝の舞台で、去年の自分を超えなければいけない。そのためには、リードされたところからでも勝たなければいけなかったんです。

去年の自分を超えるという意味で、鼓舞した部分、意識した部分はすごくありました」

――決勝で戦ったホドネイ・バルボーザ選手とは前回大会の準決勝でも対戦していました。

「現在のブラジル王者だけあって、すごく地力がありました。去年は私が先に2ポイントを取って、そのあとに2ポイントを取られてしまったんですよね。最後はレフェリー判定までもつれるギリギリの勝負でした。

一戦交えた時点で今後、確実に力をつけてくる選手という印象があったので、今回も気が抜けないというか、必ず勝ちたい相手ではありました」

――決勝戦は試合開始2分過ぎ、バルボーザ選手のアキレス腱固め狙いに対抗した芝本選手のベリンボロが場外逃避と判断されたのか、先に2ポイントを奪われてしまいました。

「ポイントを取られた時は、しまったなとは思いましたね。自分の中でもどうジャッジされるかは、曖昧な部分だったんです。効力はなかったですけど、形の上ではフットロックを取られた状態でベリンボロを打ちました。

ただ、通常のベリンボロをかける正しい方向が、あの時はたまたま場外の方向だったんです。単純にブレイクになるのか、もしかしたらサブミッションの場外逃避の2ポイントを取られるのか。私としてもあいまいな部分だったんですけど、結果的に取られてしまったと。

世界柔術前にあのシチュエーションでベリンボロを打って場外に出たらポイントを取られると確認できたので、そういった意味ではよかったです。

残り時間が十分あったので焦りはなかったですけど、同じことをやったら時間がもったいないので、展開を変えた試合を組んでいかなければいけないなと思いました。それがダブルガードから上を取るということだったんですけど」

――試合は残り3分を切ったところから、バックを取って逆転の4ポイントを獲得しました。近年、テーマに掲げていたメンタルの強化が試されるような展開でしたね。

「そこなんですよ。それが今回の一番の収穫でした。過去の試合ではポイントをリードされるとそのまま逃げ切られてしまうパターンが多かったんですけど、それは何としてもどこかで打破しなければいけない。

必ず自分が逆転するんだという気持ちを持ち続けることを今回はすごく意識しましたし、去年のカイオ戦のようにならないように、最後まで勝ち切るために集中しようと思いました」

――その後はスイープで2ポイントを追加し、6-2で勝利を収めました。ただ課題を克服できただけではなく、それがヨーロピアンという大舞台だったことも大きいですよね。

「3試合とも10分戦ったんです。逆に言えば一本勝ちもなかったですし、初戦も2点差、準決勝もアドバンテージ差。とくに大量得点の差をつけたわけではないんですけど、今まで戦ってきたどの試合よりも自信になりました。完全に試合をコントロールできたので」

――昨年のヨーロピアン決勝のカイオ戦で、試合中に予期せぬ動き、つまりイレギュラーを起こすことの必要性を感じたと話していましたが、今回それが出た場面はありましたか。

「決勝戦のラスト3分から追い上げる場面は、相手が2点を守ろうというガードの形になっていたので、通常のように相手に動きを合わせてパスするのが難しい状況でした。だから何とかして、それまでの流れとはまったく関係のない状況に持ち込みたかったんです。

そのためには考えてから動いていたのでは遅いんですよ。まさにイレギュラーが必要な状況ですよね。リバースハーフガードのトップを取って、私がキムラでロックしたところまでは自分のイメージ通りですね。

そこから先の展開に関しては、その時、起きたことに対応していった結果、最後にチャンスが巡ってくるシチュエーションをつくれました。そこをクリアできたことが、今回のメンタル面での収穫につながるところですね」

<この項、続く>

【EJJC2017】ルースター級制覇、芝本幸司 「橋本戦の敗北──今の形ではダメだと思えた」

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Koji Shibamoto【写真】本格的な日本人ライバルの出現で、より高見を目指すことができた芝本。国内でのライバルの存在──改めたブラジル人の強さが分かるような気がする芝本の橋本戦の振り返りだった (C)TSUBASA ITO

1月22日、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで開催されていたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権──最終日。黒帯ルースター級を制した芝本幸司インタビュー第2弾。
Text by Tsubasa Ito

昨年9月にアジア選手権では新世代=橋本知之に試合終了間際にアドバンテージを許し、逆転負けで大会5連覇を逃した。芝本にとって、橋本戦の敗北とはどのような意味があったのだろうか。

<芝本幸司インタビューPart.01はコチラから>


――昨年9月のアジアで橋本知之選手に敗れました。一昨年のアジアでも橋本選手と戦いその時は勝利していますが、何か違いは感じましたか。

「もう単純に、1年前よりも格段に強いなと感じましたね。試合中にそう思いました。具体的にどうというのではなく、組み合った感覚として」

――ポイント2-2でアドバンテージ1を芝本選手がリード。ラスト10秒からの攻防がポイントになったと思いますが、ご自身ではどう分析していますか。

「今はあまり深く考えていないですね、もうだいぶ日が経っているので。直後にインタビューされればもっと具体的なことを言えたと思うんですけど……。

でも、今となってはラスト10秒がどうだったということよりも、あの10分間全体で自分が弱かったですね。気持ちで攻められていなかったです。前回戦った時より相手が強いことを試合中に察知しながらも、同じような展開になってしまった。

アドバン1を自分が取って、攻める気持ちが薄れていたなというのは今振り返ってみて思います。アドバンを取ったことは関係なく、そのまま自分が勝てるかどうかは関係なく、何も考えずに次のポイントを取りにいかなければいけなかったんです。

パスガードの3点、あるいはバックテイクの4点を取ることに集中しなければいけなかったんですけど、どこかで優勝しようと思ってしまったんです。そういう気持ちで試合をしてしまったことが、自分の弱さだったと思います。だから結果的に勝ち切れなかった。

あのラスト10秒の選択がどうだったかというのは、それまでの9分50秒をもっと全力で戦った上で話せることだと思うんですよ。私はあのラスト10秒よりも、9分50秒の自分の戦い方が許せないですね」

――日本人相手というのもプレッシャーになったのでしょうか。

「やはり、かなり相手を意識してしまいましたね。彼はジャパニーズ・ナショナルのライトフェザー級で優勝しましたよね。すごいなと単純に思いました。私がいつも練習している鍵山(士門)選手に勝って優勝した。その後の全日本選手権ではうちの山田(秀之)にも勝っている。

2人はいつも練習していて、どれだけ強いかは分かっています。まあ実力は本物ですよね。同じく世界を目指して戦っていく日本人として、どこかで絶対に負けられないというプレッシャーが掛かっていたんだと思います」

――負けられない重圧など、さまざまな要因が試合に響いてしまったのですね。

「うーん……自分が守りのメンタルに入ってしまっていることは、試合中に気づいていたんですよ。それでも何とかなるかなと思ってしまったんです。そして……何ともならないくらい、相手が強かったということですね。

実力差があれば何とかなってしまうんですよ。おそらく、今まで国内で戦う時がそうだったんです。そういったメンタルで戦ったら負けてしまう状態まで、相手が強くなっていた。

あの敗戦によって試合中のメンタルというよりは、自分の柔術に対する考え方をもっと上げていかなければいけないなと気づかされました」

――……。

「私の中ではこの1年間、自分の柔術の形ができてきたと感じていて、後はそれをどれだけ磨いていくかというフェーズに入ろうとしていたんです。でも、あのアジアでの敗戦によって、まだまだ今の形ではダメだと思えたんですよね。

もうワンステップ、ツーステップ上の自分の形をつくっていかなければいけないと。アジア直後からは、ガンガン追い込んで息を切らして泥臭く練習することを、もう一回やり始めました。その結果が今回のヨーロッパに出たのかなというのはすごく感じましたね」

――アジアの敗戦が相当な刺激になったと。

「間違いないですね。本当にありがたいことです」

<この項、続く>

【EJJC2017】ルースター級制覇、芝本幸司 「ヨーロピアンの感覚の再現をパンで」

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Koji Shibamoto【写真】 (C)TSUBASA ITO

1月22日、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで開催されていたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権──最終日。黒帯ルースター級を制した芝本幸司インタビュー最終回。
Text by Tsubasa Ito

アジア柔術選手権2016での敗北によって、「日本で一番」という後ろ盾を失った芝本。悲願のムンジアル制覇へ向け、新たに構築した価値観とは何だったのか。3月に迫ったパン柔術選手権への意気込みも聞いた。
<芝本幸司インタビューPart.02はコチラから>


――黒帯になってから日本人選手に敗れたことは?

「なかったです。最後に負けたのは……金古(一朗)さんですね。茶帯のライトフェザーの時です。ルースター級で日本人に負けたことはなかったです」

――橋本選手という新世代が台頭した形になりますが、世代闘争のような意識はありますか。

「全くないですね。年齢のことを考えているから、年齢にコントロールされてしまうと思うんですよ。それよりも、自分が強くなっているかどうかが重要なんです。その中で、新たに強い相手が出てきただけのことで。

たとえば、もう自分のピークは終わったな、昔より弱くなっているなと感じてアジアの敗戦になっていたら、なかなかモチベーションが上がらなかったと思います。ただ、今回は負けてしまったけど、それでも今の方が強いんですよね。

そう考えると、あの敗戦がモチベーションが落ちる理由にならないんです。自分をどこまで高められるかがテーマであって、周りがどうというのは私にはどうしようもないことなので。自分が強くなり続けている限り、同じように自分を磨いていくだけですね」

――なるほど。

「もし自分が弱くなった時に、それが年齢によるものなのか。以前より練習を怠っているからなのか。以前よりも燃えるものがなくなったからなのか。そのあたりの原因は見極める必要があると思います」

――現在、そういった要素はまったくないと。

「現時点ではないですね」

――ヨーロピアン選手権での戦いぶりやこれまでのお話を聞く限り、アジアでの敗戦を引きずっていないことがわかって安心しました。

「そうですね。試合が終わって1日、2日考えて、早川(光由)先生ともよく話をして、自分の中で結論にたどり着いた。それでもうスパッと終わりです」

――これまで国内では無敵だったがゆえに、僅差とはいえあの一敗はかなり重いものとして受け止めているのではないかと思ったんです。

「私の場合は、早川先生が冷静に分析してくれるのが大きいと思います。先生と話をしている中で出た結論としては、ふたつに尽きるんですよね。

ひとつは先ほども言ったように、2015年のアジアよりも2016年の自分のほうが間違いなく強かった。実力が上がり続けているんだから、まだやれるということ。もうひとつは、単純に橋本選手が強いからということなんです。

私は今まで世界で戦うにあたり、日本で一番であることを自信にしていたんです。それが崩れちゃったんですよ。もう日本で一番じゃない。じゃあお前はどうやって世界で戦うんだと。今まで自分が後ろ盾にしていたものが崩壊したわけです。

そこをどう創り上げていくのかだけが悩ましいところだったんですけど、出た結論としては、日本の柔術界のレベルが上がった結果、もしかしたら彼と私が世界の1位2位かもしれない。それがたまたまアジアの1位と2位だったと。

ブラジル人はブラジルで1位だから世界にいこうなんて発想じゃない。つねにブラジル人同士が世界でしのぎを削っているわけですよ。柔術のリアルな現実である道場対抗戦というフェーズに、いよいよ日本も入ってきたなということですね」

――世界で日本人同士がしのぎを削る時代になったと。

「今までのように、自分は日本人で一番強いという自信を立てようとする気持ちは、もう私には全くありません。ただ、同じ日本人で世界レベルの人が他にいるというだけであって、彼も私も頑張っていければ良いなと。

もし世界柔術の決勝で日本人同士が戦えたら、日本柔術界にとって素晴らしいことですよね。その可能性がある2人だと思っています。アジアの1位と2位が世界の1位と2位だったとして、もちろん世界で戦う時は自分が1位の側になりたいと思っています」

――橋本選手ともう一度戦いたいという気持ちは?

「私の気持ち以前に戦うことになるでしょうね。昔から誰と戦いたいとかは余りないんですよ。自分が出たトーナメントは全部勝ちたいというだけですね。そこに彼がいれば勝ちたいし」

――次は3月のパン選手権になりますが、どういったテーマを持って臨みますか。

「ヨーロピアン選手権の試合内容が納得のいくものだったので、それを再現することです。ヨーロッパの一回で終わってしまったら意味がないよ。今回の手応えをパン選手権で再現できれば、世界選手権もいけると思っています。

優勝はもちろんしたほうが良いですけど、それよりもヨーロピアンでのあの試合感覚をパン選手権でもできるのか。それが最大のテーマです」

【JBJJF】素晴らしきかな、全日本マスター。アダルトでも最強?? 中村大輔&関根秀樹が堂々の二冠

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Podium【写真】黒帯マスター2&3のオープン表彰台。アダルトと違った柔術の魅力が、このポディウムからも伝わってくる(C)TSUBASA ITO

25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)主催の第11回全日本マスター柔術選手権が開催された。今回は黒帯の部・決勝の模様を中心に、数々の熱戦をお届けしたい。
Text by Tsubasa Ito


Yoshiokaマスター1黒帯ルースター級は、藤岡勇と吉岡崇人のワンマッチ決勝となった。開始1分過ぎ、吉岡がパスガードで3ポイントを奪うと、ニーオンザベリー、マウントで立て続けに得点を重ね、9-0と序盤で試合を決定づける。その後も攻め手を緩めず、ポイント17-0で吉岡が完勝。ワールドマスター2015黒帯ルースター級王者の実力を見せつける格好となった。

マスター1黒帯フェザー級は、韓国から参戦したイ・サンヒョンが勝ち上がり、決勝で屋宜リカルドを迎え撃った。ガードの体勢となったイ・サンヒョンは、三角絞めで屋宜を追い詰める。これをしのいだ屋宜だったが、続けざまにイ・サンヒョンがアームロックを狙い、極まらないと見るやリストロックに移行して一本勝ち。異国の地で頂点に立った。

マスター2黒帯ライト級は、準決勝で塚田市太郎を下した中村大輔と、津川浩平を破ったミケヤス・トシオ・アサダが決勝で激突。マスター2でありながらアダルトの遜色のない注目の実力者対決は──中村が引き込んでガードの体勢を取ると、アサダは果敢にパスガードを狙いにいく。その後のスタンドの攻防では、中村が襟と裾をつかんでテイクダウンを成功させ、2ポイントを先取。これが決勝点となり、中村が優勝を果たした。

Kanekoマスター3黒帯ライトフェザー級は、優勝候補筆頭の金古一朗が順当に決勝へ駒を進め、元プロシューターの吉岡広明と対戦した。試合開始直後、ガードの体勢から立ち上がった金古が2ポイントを奪い、試合をリードする。吉岡は下からスイープを狙うが金古は落ち着いて対処し、そのまま金古が逃げ切り勝ち。昨年12月の東京国際柔術に続き、マスターで連続優勝となった。

Sekineマスター3黒帯ウルトラヘビー級は、昨年の全日本、アジア選手権でアダルトを制している関根“シュレック”秀樹と、アルミル・ロジェリオ・ドス・サントスの初戦が決勝戦となった。2分過ぎ、関根がスイープを成功させて2ポイントを先取すると、パスガードも決めてリードを広げる。最後は負傷をおして出場していた関根がカラーチョークで一本勝ちを収め、貫録の優勝を飾った。

Nakamuraマスター2黒帯オープンクラス決勝は、同ライト級の準決勝に続き、中村大輔と塚田市太郎の再戦となった。中村が引き込んでクローズドガードの体勢をつくると、すぐさま起き上がって2ポイントを先制する。なおも中村がパスガード、ニーオンザベリーでポイントを追加し、そのままタイムアップ。ライト級に続いて中村が2階級制覇をはたした。

11名がエントリーしたマスター3黒帯オープンクラスは、伊藤洋邦と関根“シュレック”秀樹が優勝を争った。体格差を活かして攻め込んだ関根がパスガードからマウントポジションで7ポイントを奪うと、そのまま絞めを繰り出し一本勝ち。ウルトラヘビー級に続いて2冠を達成した。

■第11回全日本マスター柔術選手権 主なリザルト

【マスター1黒帯ルースター級】
優勝 吉岡崇人(徳島柔術)
準優勝 藤岡勇(藤田柔術)

【マスター1黒帯ライトフェザー級】
優勝 戸所誠哲(パラエストラ岐阜)
準優勝 大久保康史(Fellows)
3位 大西巧之(リバーサルジム川口リディプス)

【マスター1黒帯フェザー級】
優勝 イ・サンヒョン(デラヒーバジャパン)
準優勝 屋宜リカルド(JAWS JIU-JITSU ACADEMY)
3位 今泉貴史(パラエストラ吉祥寺)
3位 中塚靖人(リバーサルジム新宿Me,We)

【マスター1黒帯ライト級】
優勝 アレッシャンドリ・オガワ(OGAWA JIU-JITSU)
準優勝 須山渉(ブルテリアボンサイ)
3位 白築健司(トライフォース柔術アカデミー)
3位 ごとう悠司(一心柔術アカデミー)

【マスター1黒帯ミドル級】
優勝 エリック・フォート(NOVA UNIAO JAPAN)
準優勝 岡本裕士(RJJ)
3位 マーシオ・オクムラ(パラエストラ東京)

【マスター1黒帯ウルトラヘビー級】
優勝 晝間貴雅(ストライプル早稲田柔術アカデミー ヒルマ道場)
準優勝 宮尾司(サイレント柔術)

【マスター1黒帯オープンクラス】
優勝 岡本裕士(RJJ)
準優勝 マーシオ・オクムラ(パラエストラ東京)
3位 エリック・フォート(NOVA UNIAO JAPAN)
3位 宮尾司(サイレント柔術)

【マスター2黒帯ライトフェザー級】
優勝 岡市尚士(リバーサルジム新宿Me,We)
準優勝 紺野直人(パラエストラ千葉)
3位 宮本和幸(トライフォース柔術アカデミー)

【マスター2黒帯フェザー級】
優勝 高野仁(ブレイブハート)
準優勝 キム・ジヨン(パラエストラ川崎)

【マスター2黒帯ライト級】
優勝 中村大輔(パトスタジオ)
準優勝 ミケヤス・トシオ・アサダ(IMPACTO JAPAN B.J.J)
3位 津川浩平(WARP)
3位 塚田市太郎(DAMM FIGHT JAPAN)

【マスター2黒帯オープンクラス】
優勝 中村大輔(パトスタジオ)
準優勝 塚田市太郎(DAMM FIGHT JAPAN)
3位 ミケヤス・トシオ・アサダ(IMPACTO JAPAN B.J.J)
3位 坂本純(トライフォース柔術アカデミー)

【マスター3黒帯ライトフェザー級】
優勝 金古一朗(シュラプネル柔術アカデミー)
準優勝 吉岡広明(パラエストラ和泉)
3位 平田貴俊(パラエストラ小岩)
3位 カルロス・カズノ・キハラ(IMPACTO JAPAN B.J.J)

【マスター3黒帯フェザー級】
優勝 樋口弘信(グラスコ柔術アカデミー)
準優勝 大川哲夫(GRABAKA柔術クラブ)
3位 西良太郎(Shuhari 柔術)
3位 芳原零(ブレイブハート)

【マスター3黒帯ライト級】
優勝 高本裕和(ポゴナ・クラブジム)
準優勝 伊藤洋邦(JAWS JIU-JITSU ACADEMY)
3位 塚本隆康(パラエストラ吉祥寺)
3位 原晃(吹田柔術)

【マスター3黒帯ミドル級】
優勝 高橋圭太(パラエストラ小岩)
準優勝 西野大樹(パラエストラ東京)

【マスター3黒帯ミディアムヘビー級】
優勝 マルセリーニョ・レモス(OGAWA JIU-JITSU)
準優勝 ヘイス・マーシオ(CHECKMAT JAPAN)

【マスター3黒帯ウルトラヘビー級】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 アルミル・ロジェリオ・ドス・サントス(OGAWA JIU-JITSU)

【マスター3黒帯オープンクラス】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 伊藤洋邦(JAWS JIU-JITSU ACADEMY)
3位 高本裕和(ポゴナ・クラブジム)
3位 岩見充浩(Shuhari 柔術)

【マスター4黒帯ライトフェザー級】
優勝 藤田善弘(藤田柔術)
準優勝 宇原浩一(NR柔術)
3位 高倉祐二(CDJJ)
3位 木村太郎(DRAGON’S DEN)

【マスター4黒帯フェザー級】
優勝 堺谷啓(CDJJ)
準優勝 小平亮(X-TREME EBINA)

【マスター4黒帯ライト級】
優勝 清水庄二(奄美ブラジリアン柔術クラブ)
準優勝 長濱裕一(デラヒーバジャパン三島T-KIX GYM)

【マスター4黒帯ミドル級】
優勝 山崎明(ストライプル)
準優勝 増沢慶介(MAX柔術アカデミー)

【マスター4黒帯ミディアムヘビー級】
優勝 高谷聡(パラエストラ吉祥寺)

【マスター4黒帯オープンクラス】
優勝 高谷聡(パラエストラ吉祥寺)
準優勝 増沢慶介(MAX柔術アカデミー)
3位 小平亮(X-TREME EBINA)
3位 藤田善弘(藤田柔術)

【マスター5黒帯フェザー級】
優勝 和田肇(アライブ)

【マスター5黒帯ミドル級】
優勝 田中和文(タトル)

【マスター5黒帯オープンクラス】
優勝 田中和文(タトル)
準優勝 和田肇(アライブ)

【団体表彰】
優勝 リバーサルジム新宿Me,We
準優勝 X-TREME EBINA
3位 ストライプルオハナ

※印は1名のみの優勝

【JBJJF】全日本マスター、二冠。関根シュレック秀樹 「互いが互いを思いやる、マスターの良さ」

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Hideki Sekine【写真】5月には打撃系の試合出場も視野に入れているという。そして6月にはムンジアルがカリフォルニアで開催される (C)TUBASA ITO

25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。同大会では負傷をおして出場した関根“シュレック”秀樹が、マスター3黒帯ウルトラヘビー級とオープンを制した。
Text by Takao Matsui

職業格闘家・関根に大会を振り返ってもらいつつ、今後について尋ねた。


――マスター3黒帯ウルトラヘビー級とオープンの二冠達成、おめでとうございます。まず驚いたのは、成績もそうですが、髪とヒゲを伸ばした風貌でした(笑)。

「ああ、髪の毛とヒゲね。今まで警察の仕事をやってきて20年間、ずっと剃ってきました。でも警察の仕事を辞めたので、自然と伸びただけですよ」

――警察官は、髪の毛の長さが決まっていると伺っています。

「そうですね。男性は坊主か、坊主に近いスポーツ刈り。女性もパーマや茶髪は禁止されています。どうしても伸ばしたい人は、本部長の許可が必要になります。あとは一般人に見せるための潜入捜査とか、特別な場合は例外として認められることもあります」

――ドラマのイメージとは、全然、違う世界なんですね。髪とヒゲを伸ばした周りの反応はいかがでしょうか。

「『似合うね』とかは言われましたけど……、大会の翌日に退職者の送別会がありましたので、髪もヒゲも剃ってしまいました」

――そうだったのですね。勝手ながら昨年12月2日、ONEのブランドン・ベラ戦で1RにTKO負けをしったことで、何か心境の変化かあったのかと邪推してしまいました。

「違いますよ(笑)。それにあの試合は、日本人のヘビー級でタイトルマッチを組んでいただいたので、感謝の気持ちしかありません」

――敗戦のショックが大きいのではないかと心配していました。

「試合に負けたので悔しい気持ちはありましたが、正直に言うと奇跡が起こらない限り、勝つことは難しいと思っていました。UFCに出ていた選手でONE世界ヘビー級王者。準備期間を含めても、かなり厳しい試合だと認識していましたので」

――警察を辞めて、すぐの試合でしたね。

「少しでも舐めてくれれば自分にも勝機があると期待したんですけど、向かい合った時に緊張感が伝わってきて、覚悟を決めました。ハイキック、ヒザ蹴りをもらって鼻骨と眼窩底を骨折して勝負は決まりました」

――はい。

「それでも、チャンスをもらえたことに感謝しているんです。プロになれば、こういうこともありますから」

Ultra Heavy Final――なるほど。ではマスター選手権を振り返っていただきたいのですが、まずウルトラヘビー級はアルミル・ロジェリオ・ドス・サントス選手との決勝でした。いきなり引き込んだのは作戦だったのですか。

「大会の週の月曜日、MMAの練習で右足首を捻挫してしまったんです。歩けるかどうかの状態だったんで、棄権も考えました。でも、サントス選手が自分の階級にエントリーしていたんで、彼が岐阜から出てきて旅費とエントリー料が無駄になったら申し訳ないと思い、強行出場を決めました」

――ええっ!? では対戦相手のことを考えて出場したのですか。

「彼はオープンにもエントリーしていなかったので、自分が出ないと試合がなくなってしまいます。わざわざ自分とやってくれるわけですからね。試合後、すぐに表彰式に呼ばれたので話したら、仕事があったようです。そんな忙しい中で来てくれて、試合が成立してよかったと思いました」

――漢・関根の本領発揮ですね。

「彼のおかげで楽しい思いができたんで、自分の方こそ感謝しています」

――サントス選手にはカラーチョークで勝ちましたが、オープンでは初戦の原晃選手にポイントを奪われました。ケガの影響は試合中にありましたか。

「オープンは欠場しようと思っていたんです」

――そこでまた、強行出場したのは?

「いえウルトラヘビー級は自己流でテーピングをしたので、痛みが緩和できなかったんです。でも会場でプロの方にお願いして巻き直してもらったら、痛みが緩和できました。それで、出られるなと思ったんです」

――改めて原戦の印象を教えてください。

「一度、スパーリングをしたことがありました。関西のアイドル的な存在で、練習では送り迎えをしてくれる素晴らしい方なんです。彼はラッソーガードが得意で、ハラッソーガートと呼ばれるほどの名人なんですよね。それで一度、食らってみたいと思っていました。そうしたら、2回もスイープされちゃいました(苦笑)」

――最後はキムラからの突っ込み絞めで一本勝ちでした。

「まあ、あの展開は自分の得意なパターンなので」

――二回戦は、ヒザ十字で一本勝ちでした。

「ハーフガードで足が抜けない状態だったんです。ちょうどケガをしている足だったので、無理やり引き抜くと自分が痛い。引き抜くと見せかけてのヒザ十字でした」

――準決勝の高本裕和選手との試合は簡単ではなかったです。

「その前の週の関東オープンでも彼とは戦っていたんですけど、万全の状態でもテイクダウンが難しいことは分かっていました。引き込んだ時に、飛び越えてパスされることを警戒していたのでじっくり攻めました。それは狙っていないことが分かったので引き込んだらサイドを取られそうになって、強引に力技でパスしました」

――高本選手は大外刈りを狙っていましたが、逆に返しましたね。

「負傷していた足側に仕掛けられていたら、ポイントを取られていたと思います」

Open final――決勝戦は、伊藤洋邦選手。関根選手は、彼が決勝まで勝ち上がるまでに声援を送っていました。

「はい。伊藤選手とは、同じ浜松出身なんです。彼は自分の2つ下なんですけど、中学の時に柔道の出稽古で一緒になったことがありました。柔道のエリートで、寝技でボコボコにされたんです」

――関根選手が、寝技でボコボコに!?

「強かったですね。引き込まれて抑え込みに入られて。柔術では彼の方が帯が上がっていったので、これまで対戦することはなかったんですけど、今年の年始に伊藤選手の下で稽古をさせてもらったこともありました。『浜松同士で決勝を戦いましょう』と試合前に約束していたんです」

――それが実現したわけですね。最後のフィニッシュは?

「肩固めのような形ですね。相手の腕に体重を乗せて頸動脈を絞める形です。でも、戦えて楽しかったです」

――見事に二階級を制したわけですが、関根選手はマスター選手権にはどのような印象を持っていますか。

「昨年末のマスターオープンもそうでしたが、アダルトの殺伐とした雰囲気とは違いますね。『10年前に戦ったことがあるけど覚えている?』という会話が、そこらへんから聞こえてくるんです。なんでしょうね、この後味の良さは。互いが互いを思いやるというか。勝っても負けても笑顔で」

――そこには同じ空気感を共有できる喜びや邂逅といった側面があるのでしょうね。

「大会が終わった後も、アカデミーの垣根を越えて仲間や戦友と打ち上げをして盛り上がりました。これもマスターの良さですね」

――1000名規模の大きな大会でしたから、試合をする全国組織の同窓会のような雰囲気があったように思えました。

「ボンサイからも出て見たいという声がありましたので、次回が楽しみです」

――では最後に今後の予定を教えてください。

「柔術は、近々の予定では3月5日のADCCアジア&オセアニアチャンピオンシップ、3月19日のグランドインパクト・サウスJAPAN、4月2日の柔術新聞杯に出場します。ジャパニーズ・ナショナルとワールドプロは出場を検討中です。あとは5月に打撃系の大会にも出場するつもりで調整しています」

――打撃の大会ですか。

「具体的には発表できませんが、挑戦したいと思っています」

――しかし、お忙しいですね。

「これが専業ですからね。ヒゲを剃る時間もありません(笑)」

■第11回全日本マスター柔術選手権 主なリザルト

【マスター3黒帯ウルトラヘビー級】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 アルミル・ロジェリオ・ドス・サントス(OGAWA JIU-JITSU)

【マスター3黒帯オープンクラス】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 伊藤洋邦(JAWS JIU-JITSU ACADEMY)
3位 高本裕和(ポゴナ・クラブジム)
3位 岩見充浩(Shuhari 柔術)

【JBJJF】マスター選手権 マスター1黒帯ルースタ級優勝、旅人・吉岡崇人「ノリです」

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Yoshioka【写真】夜の東京が苦手??? 吉岡の独特な世界観と柔術観が語られる (C)TUBASA ITO

2月25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。マスター1黒帯ルースター級は、現在、米国や中国を拠点としている吉岡崇人が凱旋優勝を飾った。
Text by Tsubasa Ito

試合翌日、故郷の徳島へ帰省する直前の吉岡を都内某所のスターバックスコーヒーでキャッチした。すると、吉岡は『スターバックスって日本ではほとんど来ないですね』と話し始め、独特な人生観を語ってくれた。


──スタバには来ない?

「日本では、ですね。海外だとインターネットを拾いに入ることはあるんですけど。前に行ったドバイのスターバックスはすごい印象に残っていますね。ヨーロッパ選手権の帰りでしたね。ポルトガルのリスボンから関空まで直行便がないので、ドバイを経由したんです。空港を出てビーチを目指したんですけど、降りるところを間違えたらしく普通に砂漠なんですよ。もともと砂漠に街をつくっただけですから」

――砂漠もそうですが、高層ビルが建ち並ぶイメージもありました。

「どうだろう……。僕がバスを降りて歩いたのは砂漠でしたね。気温が40度以上あったと思うんですけど、汗をかきすぎたら寒気がしてくるんですよ。とにかく水が飲みたいと思っていた時に民家の外に水道があって、飲めるか飲めんかさえも分からないんですけど、人間ってそういう状況だと飲めてしまうんですよ」

――空港で水は買わなかったのですか。

「そんなものはとっくになくなっていました(笑)。何とか水道の水を飲んでしのいで、ちょっと歩いたら砂漠の中にポツンとスターバックスがあったんです。Wi-Fiを拾って地図を見て、飲み物を頼んで助かりました」

――九死に一生を得たわけですね。その後は無事にビーチへたどり着いたのですか。

「行けましたね。スタバからはすぐ近くでした」

――現在は中国や米国を生活の拠点にしている吉岡選手ですが、今回帰国したのは主にどういった理由からですか。

「事務的なことがメインですね。ビザの関係で手続きが必要なので。今は北京に家があるので、3月の中旬くらいには中国に戻ります」

――米国では南カリフォルニア、コスタメサのAOJに所属しています。

「戻れるなら早く米国に戻りたいんですけど、おそらく今年の5月から8月の間になると思います。今、スポーツ選手が取るアスリートビザを取ろうとしているんですよ」

――取得が大変そうですね。

「だいぶ掛かりました。準備を始めてから、もうそろそろ2年経つんじゃないですかね」

――ちょうど日本に帰国するタイミングで、今回の全日本マスターがあったと。

「そうですね。北京の道場の生徒たちも出ることになっていたので、それなら僕も出ようかなと」

――会場で吉岡選手に声援を送っていたのは、中国の選手だったのですね。

「要は彼らを育てる代わりにお金をもらっているんです。実際は僕が勝手に自分の練習をしているだけですけど(笑)。でも、それであいつらは強くなっていますからね。結局、やっていることは徳島の時と一緒なんですけどね」

――自分が強くなることが、結果的にまわりのレベルアップにもつながる?

「都合の良い捉え方ですけど、そう思います。あまり僕が向き合い過ぎたらダメなんですよ。もちろん教えますけど、ボロカスに言って、けちょんけちょんにしてやめる人はそれで良いんです。何でもそうですけど、辛いけどやろうという人が来たらいいなと」

――選手志向の人が集まっているのですね。

「そうですね。じゃないとやる意味がないですから」

――アカデミーの名称は?

「『天玉閣(てんぎょくかく)』です。アルファベットではTYGと表記するんですけど、くしくも『タカヒト・ヨシオカ・ジム』みたいになっています(笑)」

――偶然にも(笑)。中国ではマンションの提供や運転手つきの送迎など、VIP待遇を受けているそうですが、ジムのオーナーとの接点はどこからですか。

「僕がワールドマスターで優勝した後に、北京へセミナーに行ったんです。その時に参加してくれた人の中に出資者というか、ジムを出したいという人がいて、ありがたいことに僕の柔術や人生観に共感して、指導者として声を掛けてくれたんですよね。中国人にとっては米国人やブラジル人よりも、同じアジアの日本人に馴染みがあるんです。

それに、『日本製』って世界的にもすごく良いものというイメージがあるじゃないですか。それを使っているのが、中国の富裕層にはステータスらしいんですよ。人間で言えば、黒帯で世界王者の日本人を呼んでいるというのが。それで実際に生徒が集まってくれているので、嬉しいですよね」

――日本を出た理由としては、新しい刺激が欲しかったからですか。

「多分そうだと思います。日本に飽きたんです」

――あまり東京に来る機会もない?

「来ないですね。東京、苦手なんです。他人感があるというか……。いやもう全然違うじゃないですか。みんなオシャレだし、アウェイですよ。だから今回、会場で金古一朗さんが話しかけてくださった時は、泣きそうでした(笑)。僕のことを知ってくれているんやって」

――カリフォルニアは東京と違いますか。

「カリフォルニアって大都会じゃないんですよ。都会の場所もありますけど、車社会だし、僕みたいな人間には住みやすいですね。北京なんかは凄い都会ですけどね。徳島で育った僕にはLAは良いところですよ。だからって徳島に近いと言ったら『おいおい』って言われそうですけど、両方とも海がありますし」

――海外でコミュニケーションを取れる吉岡選手なのに、東京が苦手というのも意外ですね。

「海外だと外国語だからじゃないですか。僕はまだそこまでネイティブじゃなく、頭の中で一度、日本語を英語や中国語に訳してから話すので、言葉を選ぶことをしていると思うんですよ。だから外国では良い人でいられるんじゃないですか(笑)」

――ネイティブではないからこそ、良い塩梅になると。

「はっきり言いますけどね。僕ははっきり言わないのが嫌なんです。イエスかノーか。白か黒か。思ったことは思った時に、直接本人に言う。言ったら終わり。2度は言わない」

――そこは海外でも国内でも変わらないのですね。ところでマスター選手権はいつ以来のトーナメント出場だったのですか。

「去年のムンジアルの後に、大阪で2大会に出ました。そう考えると久しぶりですね」

――ムンジアルから逆算して、もしくはポイントを獲得するためなど、出場する試合を選ぶ理由はさまざまだと思いますが、吉岡選手の中での基準は?

「ノリです」

<この項、続く>


【JBJJF】マスター選手権 黒帯ルースター級優勝、吉岡崇人「誰よりもしんどい練習」

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Yoshioka【写真】全日本マスター優勝も、どこか──ぶらり途中下車の旅的な雰囲気を持つ吉岡だった (C)TUBASA ITO

2月25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。マスター1黒帯ルースター級を制した吉岡崇人インタビュー後編。
Text by Tsubasa Ito

マスターを振り返りつつ、『誰よりもしんどいことを課している』という柔術道を吉岡は語った。

<吉岡崇人インタビューPart.01はコチラから>

――(笑)。ノリではポイントを獲得できない場合もあるじゃないですか。

「でも、乗っていないと試合もできないですからね」

――現在、ポイントの状況はどうなっているのでしょうか。

「あとちょっとなんですけど、細かい数字までは……。ムンジアルまでに、アメリカで選手権に2つくらい出ます」

――あまりポイントを気にしていないのですね。

「どうせ出ますからね。そこで勝つつもりなので」

Final――全日本マスターは、藤岡勇選手とのワンマッチ決勝戦となりました。

「最後までシャキッとしなかったですね」

――得点としては17-0で完勝を収めましたが……。

「それは僕がだれたからですよ。極めていないということじゃないですか」

――吉岡選手にとって、試合の充足感はどこにあるのですか。

「勝つことが最優先です。ただ、マスター1は6分しかないですし、しかも1試合だけだったので、もうちょっとキレのある試合をしても良いかなというのはありました。時間が短い中で大量に点を取ると、精神的に優位に立ってしまうじゃないですか。そうするとキレがなくなるというか」

――試合開始直後はすぐに引き込みにいきました。

「あれは性格だと思います。これは僕の持論ですけど、ケンカと一緒なんですよ。最初に鼻を殴らなきゃダメなんです。ビビらせることが必要ですね。技とかスタミナってそこまで差はないんですよね。先に心を折ったほうが強いと僕は考えています」

――それはAOJで強く感じたことですか。

「そうですね。やらないとやられますから。練習で何を鍛えているかというと、これだけやってきたんやから負けるわけがないという『気』ですね。やっていなかったら思えないじゃないですか。それが試合で向き合った時に出るんです」

――AOJという刺激的な環境から離れていることに、焦りや不安はないですか。

「だから毎日、必死に練習していますよ。不安があるからやるんです。日本にフラッと帰ってきて、大会に出て、盤石の優勝って言われますけど、誰よりも苦しんでいる自信はあります。

今まで対戦していただいた皆さんも素晴らしい選手ばかりですけど、練習しているのは当たり前だとして、誰よりもしんどい練習を自分に課している自信はあります。その自信がなければ、いくらノリといえども試合はしないですよ」

――「誰よりもしんどい練習」というのは、具体的にどのあたりで感じていますか。

「休みたいな、つらいな、水を飲みたいなというところから、練習開始です。筋肉がビクビク痙攣し出しても、そこで休まない。水を飲まない。座らない。そこから10分です。その中で何ができたかなんて、どうでも良いんですよ。やったこと自体が大事なので。

しんどい状況で今日をやり切った。昨日もやった。1週間できた。来週もがんばろう。それが一番大事です」

――現在、練習は週に何日ですか。

「5日ですね。午前10時から90分間は選手練習です。昼を食べて休憩して、筋トレかドリルをして、夜にまた練習。一般のクラスの指導とか、グラップリングの日もあります。指導メインか自分の練習かは、日によって変わりますね」

――しんどいことを続けられるモチベーションはどこにあるのですか。

「そうですね……。僕は柔術が好きでしょうがないわけではないんです。格闘技やスポーツが好きなわけでもないんですよ。でも、僕の人生を謳歌するために柔術が必要なんです。ちゃんと頑張る。自分を追い込む。世界一になる。そのために怠けずに頑張る。それで家族を養う。自分の体で稼ぐ。人から評価されるために、柔術を使っているというか。

だからある意味では、誰よりも柔術が好きとも言えるかもしれないですね。だけど好きな柔術家もいないですし、柔術家の名前をパッと言われても知らないこともあります」

――柔術は自分を表現するための手段というか……。

「それは近いかもしれないですね。でも、それにしてはすごい腐れ縁のような気もするんです。利用しているみたいな言い方をしましたけど、切っても切れない関係ですよね。どんな時も柔術に救われているし、柔術も僕のことを好きでいてくれているのかなと感じることもありますし。だからここまで続いているんでしょうね」

――そんな柔術での今後の目標を教えてください。

「今後の目標かぁ……。ノーギは挑戦していきたいですね。前も少し出ていたんですけど、もうちょっとやりたいかなと」

――それは……。

「何でノーギをやりたいかですか? まあ……ノリで」

――言うと思いました(笑)。約3ヵ月後にはムンジアルも控えています。

「どの大会も一緒ですよ。やるだけです」

――昨年のムンジアルでは、強豪のルーカス・ピネイロ選手にアドバンテージ1差で惜敗を喫しました。

「あの日を忘れたことはないですよ。幸せなことですよね、その一日のことでここまで来られているわけですから。だから借りを返そうと思います」

――ピネイロ選手にというよりは……。

「自分ですね。試合内容に関しては納得がいっているんですけど、あれでは勝てんなとも思えました。でも終わったことなので、まあいろいろな思い出の中の一つですよ。全部が全部上手くはいかないし、それらの上に今、立っていますから。

もちろん、今回の試合も然りですね。たまたま勝ったから偉そうなこと言っていますけど、負けていたら落ち込んでいると思いますし。でも、負けても勝っても来年になったらたいした差じゃないんですよ」

――思い出になると。

「思い出の一つなので、そんなの覚えていないんですよ。僕が紫帯の時に優勝したとか、一回戦で負けてめっちゃヘコんだとか、そんなこと覚えていないんです。だから去年のことは確かにショックでしたけど、その上に立っているんで、それで良いんです」

――旅人の吉岡選手にとって、この旅の最終目的地はどこにあるのでしょうか。

「進んでいる中にムンジアル制覇というのはありますけど……最終というと、相当遠いところにあるからまだ分からないですね。だって、いつまで歯を磨き続けますか?というのと一緒じゃないですか。

途中で死ぬかも? うーん……そうなったらそれまでですよ」

【ADCC Asia & Oceania trial】嶋田裕太&関根秀樹、貫禄の優勝。カザフスタン勢強し

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Winners【写真】日本、豪州、そして今大会で思わぬ活躍が目立ったカザフスタンから予選優勝者が誕生。カザフスタンは今後、アジア&オセアニア予選の台風の目となってくるか (C)TAKAO MATSUI

5日、東京都墨田区の墨田区総合体育館でADCCアジア&オセアニア予選が開催された。9月22~24日にフィンランドのエスポー・メトロ・アリーナで行われる世界選手権への出場権を巡り、日本、韓国、豪州、カザフスタンの選手が各階級で代表権を争った。
Text by Takao Matsui


【66キロ以下級】
66kg final22名が参加したこの階級は、JBJJF主催の2016年アジア選手権黒帯ライトフェザー級王者の嶋田裕太が優勝候補として注目を集めた。対抗となったのは、ノーギ柔術全日本階級制覇など数々の実績を残した西林浩平、成長著しい佐野貴文、パラエストラ東京の吉竹哲也、アライブの竹本啓哉といった強豪が続いた。

嶋田は初戦でカザフスタンのナリマン・ミンバエフと対戦。パスガードを2回決めて6-0で判定勝ちを収めた。2回戦は豪州のロバート・サバルディンと激突。サバルディンは、2013年のADCC世界選手権に出場経験のある強豪で、今大会の1回戦では中島康輔からエレクトリックチェアーで一本勝ちを奪って勝ち上がった。嶋田はダブルレッグをギロチンのカウンターで返してスイープとパスでポイントを奪い、5-0で勝利。準決勝は、カザフスタンのカルダー・アブディカビルからポイント6-0で勝利を収めて決勝へ進出した。

もう一方のブロックは混戦模様。西林がネイル・キャンベルから7-0で勝利を収め、準決勝で佐野と対戦し、本戦0-0で延長戦へ。互いにスイープを決めて2-2として、レフェリー判定で佐野が西林を破った。

決勝は、嶋田と佐野の顔合わせ。昨年末のRIZIN柔術オープントーナメントの再戦が実現した。初めての対戦は判定で嶋田が勝利を収めたが、今回も好勝負が予想された。トップをキープした嶋田は、佐野のバックを奪うが、フックが甘かったのか逆に奪われる展開に。これを逃れた嶋田が、再びバックを奪うとリアネイキドチョークで一本勝ち。ADCC世界選手権の出場権を手に入れた。

【77キロ以下級】
77 finalこの階級も、18名がエントリーして激戦が目立った。中倉三四郎、鈴木槙吾、新美吉太郎、山脇悠佑といった面々に加え、総合格闘技道場コブラ会の出花崇太郎が出場したことで激戦区へと発展。優勝候補の出花を軸に展開すると思われた。

中倉、鈴木、山脇が順当に勝ち上がるなか、なんと出花が初戦でいきなりリアネイキドチョークを極められて一本負け。勝ったのは、豪州のジャック・ベッカーだった。さらにベッカーは、山脇をリアネイキドチョークで下し準決勝へ進出。このままベッカーが勝ち上がるかと思われたが、カザフスタンのオスマンザン・アシモフが肩車で投げてテイクダウンを奪い2-0で接戦をものにした。

決勝は、アシモフと極めの強さで勝ち上がった鈴木が対戦。この試合も、投げを狙うアシモフと足関節を極めにかかる鈴木の白熱の攻防となる。本戦、延長でも差がつかずに勝負は判定へ。長い協議の結果、アシモフが勝利。鈴木は叫び声をあげてその場に崩れ落ちた。

【88キロ以下級】
88 final元パンクラス王者の和田拓也が、2年前の大会に続き連続参戦。前回優勝の三原秀美との決勝対決が期待されたが、すべては豪州のキット・デイルに持っていかれた。デイルは初戦で大場慎之助からギロチンチョークで一本勝ち。三原戦も3-0で勝利を収め、下馬評通りの活躍を見せた。

決勝では、和田を破って勝ち上がってきたバイキング・ウォンと対戦。ウォンは、ONEグラップリングのエリートヘビーオープンで準優勝という肩書を持つ選手。そのウォンに対してデイルは、パスとスイープを決めて5-0で快勝した。

【99キロ以下級】
99 finalこの階級は、小澤幸康が優勝候補。この1強を誰が崩すのか注目された。小澤は、初戦で前回大会3位のハリー・グレッチと対戦して接戦となる。本戦、延長も0-0と差がつかない。勝負は判定となり、やや優勢に戦った小澤が勝利して決勝へ勝ち上がった。

決勝で小澤と対峙したのは、パラエストラ東大阪の南和良。この試合は、立ち技の攻防が目立ち、両者が譲らない攻防となる。足技で崩しにかかる小澤。しかし本戦、延長と差がつかずに判定へ。積極的に仕掛けた小澤が、世界選手権の出場権を勝ち取った。

【99キロ超級】
+99 final前回大会に続き、関根“シュレック”秀樹が参戦。フリーの日比谷紳助が欠場となったことで、誰が怪物を止めるのか注目を集めた。関根は、初戦でカザフスタンのアントン・アマンバエフを延長4-0で破って決勝へ。韓国のキム・ヒョンウは、マイケル・ウィルソンからヒールで一本勝ちを収め、関根との対戦へ駒を進めた。

決勝戦。JBJJF主催の全日本マスター選手権の直前に負傷した足にテーピングで固め、強行出場する関根。ヒョンウは、その負傷した足を狙いにいく。だが関根は、そこを攻めさせないようにうまく動き、パスガードの3点を奪い、無失点で快勝した。

【女子60キロ以下級】
Women 60kgムンジアル女王の湯浅麗歌子が、断トツの優勝候補。勝ち上がってきたイウィア・グルコワスカに三角絞めを仕掛け、腕十字に移行する。腕のロックを外されないように踏ん張るグルコワスカの上へ乗ると、今度は逆の腕を取って十字固めの体勢へ。完璧な試合運びで一本勝ちを収めて優勝した。

■ADCCアジア&オセアニア予選リザルト

【66キロ以下級】
優勝 嶋田裕太(ネクサセンス)
準優勝 佐野貴文(アクシス)
3位 カルダー・アブディカビル(カザフスタン・トップチーム)

【77キロ以下級】
優勝 オスマンザン・アシモフ(カザフスタン・トップチーム)
準優勝 鈴木槙吾(アライアンス)
3位 ジャック・ベッカー(ノヴァウニオン)

【88キロ以下級】
優勝 キット・デイル(アブソリュート MMA)
準優勝 バイキング・ウォン(イングロリアス・グラップラーズ)

【99キロ以下級】
優勝  小澤幸康(TEAM-KAZE)
準優勝 南和良(パラエストラ大阪)
3位  ハリー・グレッチ(イゴールMMA)

【99キロ超級】
優勝 関根秀樹(ボンサイブルテリア)
準優勝 キム・ヒョンウ(10th プラネット)
3位 アントン・アマンバエフ(カザフスタン・トップチーム)

【女子60キロ以下級】
優勝  湯浅麗歌子 (パラエストラ品川)
準優勝 イウィア・グルコワスカ(アブソリュートMMA)
3位  ピッパ・ショー(モロウブラ・アブソリュートMMA)

【ADCC Asia & Oceania trial】66キロ級優勝、嶋田裕太「パン選手権は実力測定試合」

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Yuta Shimada【写真】嶋田にとってノーギでは国内最大のライバルになりつつあるのが、まだ紫帯の佐野かもしれない(C)TAKAO MATSUI

5日、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたADCCアジア&オセアニア予選。同大会の66キロ以下級の大本命だった嶋田裕太が、危なげなく優勝を飾った。

そんな嶋田を大会の翌日にインタビュー、激戦を振り返ってもらい来週に控えたパン柔術選手権について話を訊いた。
Text by Takao Matsui


――66キロ以下級の優勝おめでとうございます。

「あ、ありがとうございます」

――眠そうですね。

「すみません、30分前に起きたばかりです(笑)」

――いまは昼の1時ですが、昨日は祝勝会で帰ったのが遅かったのですか。

「それもありますが、疲れました。試合間隔が長かったので、集中力を切らさないようにするのが大変でした」

――確かに長い大会でした。早速、試合を振り返ってもらいたいのですが、初戦はカザフスタンのナリマン・ミンバエフ選手との対戦でした。

「えっと……、はい、思い出しました。自分はシードだったので、彼の1回戦の試合を見ることができました。その時に感じたのは、そこまで強くないという印象でした。相手の選手の方が優勢に戦っていましたが、レスリング的な動きでテイクダウンとスイープでポイントを奪って逆転勝ちしていたんです」

――は6-2でビリー・サム選手を下していましたね。

「実際に彼と対峙してみて、罠を仕掛けてきたのが分かりました。わざと、僕がいいポジションを取れるように誘導してくるんです。露骨に足を横に向けて、パスをさせようとしてきました。おそらく1回戦も、それで勝ったんだと思います。自分が得意なポジションでもあったので、あえて罠にはまってもよかったんですけど、初戦ですしそこで勝負をせずに逆の方向から攻めていきました。そうしたら、スムーズにパスができて勝つことができたんです」

――次の試合は、豪州のロバート・サバルディン選手が相手でした。

「この試合も、最初の試合が見られたのが幸運でした。ロバート選手は中島(康輔)さんと対戦しましたが、引き込みとディープハーフを仕掛けてエレクトリックチェアーでヒザを極めました。中島さんとは、一緒に練習をしたことがあって強い選手なのは知っていました。その中島さんをロバート選手が一本で勝ったので、警戒をしていましたね」

――序盤は牽制し合っている印象でしたが、ダブルレッグに入られても冷静に対処していましたね。

「驚きました。あまり積極的に動いていかなかったので、ダブルレッグに入られて面食らいました。でもうまくギロチンのカウンターを取れたので、スイープとパスでポイントを奪うことができたんです」

――見事な試合でした。準決勝は、またカザフスタンの選手との対戦でしたね。

「手足が長くてリーチがあるので、やりにくいかと思いましたが、逆でしたね。なんでも対応できる印象でしたが、一芸に秀でているようなタイプではありませんでした。特化した技がなかったようで、自分としてはそういうタイプの選手の方が戦いやすいです」

――この試合は、6-0の快勝。決勝は、佐野貴文選手との再戦になりました。

「佐野君とは、RIZINの柔術トーナメントで初めて戦いました。2、3年前に一度だけ、ライトスパーをしたことはあったんですけど、その時から強い印象はありました。だから今回のエントリーリストを見た時に、どこかで対戦することになるなと思っていました」

――RIZINでは佐野選手に判定勝ちでした。

「あの時は引き込んできて、判定をつけるとすれば0-0と差はなかったと思います。自分の方がポジションをとっていたので、JBJJFのルールとして考えると、アドバンテージ差くらいの勝利だったはずです。でも彼は柔術的な動きというよりも、外掛けを仕掛けてきたり、送り襟絞めではなくギロチンを狙ってきます。直接、腕で首を絞めてくるような動きを見せるなど、独特なスタイルと強さがありますね」

――今回の再戦はいかがでしたか。

「決勝戦のみ、最初から引き込むとマイナスポイントがついてしまいます。それは勝敗にかかわることなので慎重になりました。なので、できるだけ引き込まないようにトップを取りたいと思っていました。でも相手が強気で攻めてきたので、いつも通りに戦うよう意識したことがいい方向に出ました。うまくトップを取れて自分のペースで試合を進めることができたんです」

――佐野選手の台頭も著しいですが、嶋田選手の安定した試合運びはその上を行っているように見えました。

「自信を持って仕掛けることができて、バックを取りかけたんですが、ここで悪い癖が出てしまいました。柔術だとバックを取ったら、片足ずつフックしてポイントを奪いに行くんですが、ADCCルールはどんな足の組み方でもポイントになるんです。そのことをバックを取った瞬間に思い出して……。いつも練習でやらない動きをしてしまい、バックを奪い返されてしまったんです」

――会場が一番、盛り上がった瞬間でした。その後の切り返しが見事でしたね。

「焦らずに対応ができたことで、どうにか逃げることができました。その後は、ガードで向かい合って、再び自分がバックに回り込むことができたんです。佐野選手は足が長いのに器用に動かすことができて、変則的な角度から入ってきます。勝つために、バックへ回る込むことを意識していました。それでバックでポイントが入り、相手の片腕を自分の片足でロックして、もう片方の腕を片手で取り、片手でリアネイキドチョークを極めました」

――技の名称は、リアネイキドチョークで良いですか。

「良いと思います。マルセリーニョから教わった時は、アームトラップと言っていましたが、最後の形はRNCです」

――最後は一本勝ちで快勝でしたが、今大会全体を振り返ってみていかがでしたか。

「勝てるだろうという自信を持って臨みましたが、負けられないというプレッシャーも同時にありました。これまでは挑戦する気持ちで試合をすることが多かったので、負けられない戦いのプレッシャーを経験した大会でしたね。あとは黒帯になってからは日本人としか戦ってこなかったので、今回、3人の外国人と対戦できたことは収穫でした。彼らがどのくらいのレベルの帯なのかは分かりませんが、実際に強かったですからね。今後に向けてのいい経験になりました」

――これでADCC世界選手権出場を決めたわけですが、次の試合は3月15日から開催されるIBJJF主催のパン選手権になりますね。

「はい。今月16日に渡米する予定です。パン選手権は、自分の実力を測定する大会になると思っていますので、いい緊張感を持って臨めそうです」

――ライトフェザー級にエントリーされていますが、マイキー・ムスメシ選手など実力者が揃っています。

「楽しみですね。ムンジアルで表彰台に上がることを目標にしていますので、世界ベスト4に入るか入らないかといった際にいる選手が揃っているパン選手権は勝たないといけません。もちろん、それ以外の黒帯の選手にも負けるわけにはいきません」

――自信のほどは?

「挑戦者の気持ちではいますが、やるしかないですね。今回のADCC予選の優勝を弾みにして、いい報告ができるようにがんばってきます!」

■ADCCアジア&オセアニア予選リザルト

【66キロ以下級】
優勝  嶋田裕太(ネクサセンス)
準優勝 佐野貴文(アクシス)
3位  カルダー・アブディカビル(カザフスタントップチーム)

【JBJJF】全日本マスターに韓国から参加したイ・サンヒョンに訊く、日本と韓国の柔術の違い

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Korean BJJ team【写真】右から2人目がイ・サンヒョン(C)TSUBASA ITO

2月25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。黒・茶・紫帯の試合が行われた大会初日には、韓国から6名の選手が参戦した。選手を代表して、マスター1黒帯フェザー級を制したイ・サンヒョンに、JBJJFの浜島邦明理事長!!が話を訊いた。
Text by Tsubasa Ito


――今回、全日本マスターに出場することになった経緯を教えてください。

「日本の試合、黒帯の試合を経験したかったからです。それに、自分が日本の試合に出て勉強することで、道場の会員さんたちにどんなトレーニングをしたらいいのか、どんな技がいいのかなど、実戦で使える技術のアドバイスができると思いました」

――日本は近いので、比較的出場しやすいですか。

「近いのもありますし、日本は大会が多く試合をする機会がたくさんありますからね」

――日本の中でもいろいろな大会がありますが、全日本マスターを選んだ理由は?

「一番近い大会だったからです。1月にはトレーニングも兼ねて柔道の試合にも出て、全日本マスターのために練習してきました」

――クロストレーニングですね。ところで、どこで今大会の情報を知ったのですか。

「JBJJFのウェブサイトです」

――サイトはよくチェックしているのでしょうか。

「いつもチェックしています。出たい大会はたくさんありますが、自分の道場があるのでスケジュール的になかなか難しい部分もありますね」

――韓国の黒帯の中では相当、試合に出ていますよね。

「自分もたくさん出ていますけど、チェ・ワンキなど他の選手もたくさん出ているので、自分が特別というわけではないですね」

――イ・サンヒョン選手はKBJJAの役員でもありますが、選手と役員、両方の視点から日本の印象を教えてください。

「一番はスムーズな運営です。そういった良い部分を持ち帰り、イ・ジョンウ代表たちと韓国の大会に反映しています。日本の選手に関しては、みなさん秩序を守ってくれますし、選手がたくさん参加するので対戦相手に困らないことも素晴らしいです」

――では柔術家として今後の試合スケジュールを教えてください。

「フィリピン、ムンジアル、アジア選手権ですね。韓国で柔道の試合にも出ます。トレーニングの一環です」

――ジャパニーズ・ナショナルはいかがですか。ポイントが掛かった大会です。

「出たかったのですが、5月にフィリピンの大会があるので難しいと思います。でも、韓国からは結構な数の選手が出ると思いますよ」

マスター2黒帯フェザー級で準優勝のキム・ジヨン(C)) TSUBASA ITO

マスター2黒帯フェザー級で準優勝のキム・ジヨン(C)) TSUBASA ITO

――今大会に出場してみて、どのような点に韓国と日本の違いを感じましたか。

「日本は韓国に比べて歴史がある分、経験値がすごいですね。反応も早いです。韓国は日本に比べてパワーで押し込む印象です」

――なるほど、では今後の目標を。

「試合に勝つことはもちろんですが、自分の弟子とたくさん試合に出ていきたいです」

――ぜひこれからも日本と韓国が競い合って、交流を続けていければと思います。今後ともよろしくお願いします。

「私も同じ気持ちですし、柔術の発展に貢献していきたいと思います」

【PJJC2017】残念過ぎる芝本&橋本の欠場。ライトフェザー級に嶋田&山田が出場

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Yuta Shimada【写真】2試合のミヤオ戦が山となる──とはいえ、初戦から気を抜ける戦いがあるわけではない。まずは初戦突破という気持ちで嶋田にはパンに挑んでほしい (C)MMAPLANET

16日(木・現地時間)から19日(日・同)にかけてカリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われている。実に5日間もかけて行われるこのイベントは、世界選手権に次ぐ規模のブラジリアン柔術大会だ。世界選手権への前哨戦ともいえ、多くの強豪が顔を揃えた同大会アダルト黒帯の部の見所──プレビュー第一回は、日本人選手も多く出場する軽量3階級の見所を紹介したい。


【ルースター級】
これまで実に8度世界王者に輝き、14年から昨年までも世界大会3連覇中のブルーノ・マルファシーニ(アリアンシ)がエントリー。カイオ・テハ、ジョアオ・ミヤオ、マイキー・ムスメシ等ライバルとなりそうな選手が出場していない今回、まさに不動の大本命だ。長年世界の頂点に君臨しているため大ベテランと思われがちだが、実はまだ31歳。驚異的な瞬発力を誇る最軽量級最強柔術家が、世界4連覇に向けてどのような動きを見せてくれるか。

このマルファシーニの対抗馬と考えられていた芝本幸司(トライフォース)、橋本知之(カルペディエム)は両者揃って、負傷欠場。ベテランと若武者、世界の頂点と真っ向からぶつかり合う姿はお預けとなってしまった。

そんななか、マルファシーニと頂上を争うことが予想されるのが、昨年の準優勝者のルーカス・ピニェーロ(AMBJJ)だ。昨年の今大会では準決勝で芝本幸司に勝利し、決勝ではマイキー・ムスメシに逆転負けしたもののパスガードを奪ってみせている。最低でも表彰台を争うポジションにあった芝本と橋本の欠場は残念でならない。

【ライトフェザー級】
本命は昨年の本大会ルースター級を制したマイキー・ムスメシ(ブラザCTA)か。モダン柔術におけるポイントゲームの勝負どころを知り抜いた米国の若き天才は、今年のヨーロピアンの今階級も制覇しており、その勢いに翳りは見られない。

対抗は、おなじみジョアオ・ミヤオ(PSLPBシセロ・コスタ)か。世界を席巻した革命児も最近は不調。ここのところムスメシには得意のモダン柔術戦でことごとく競り負け3連敗を喫し、また今年のヨーロピアンでは準決勝でガブリエル・モラエスにまさかのパスガードを許して敗退、ムスメシにたどり着くことすらできなかった。深刻な負傷を抱えると言われながらも、変わらぬ驚異的なペースで試合出場を続け、修行層の如きひたすらストイックな姿勢で競技柔術に取り組み続ける若者の復活なるか。

日本からは、山田秀之(トライフォース)と嶋田裕太(ネクサセンス)の2人が参戦。山田は一回戦で強豪のチアゴ・バホス(PSLPBシセロ・コスタ)といきなり試練の一戦となる。

一方の嶋田は、これまで紫帯、茶帯における世界のトップで戦ってきた後、昨年満を持して黒帯に昇格。同年のアジア大会を、準決勝で山田から裸絞めで一本勝ちをするなど安定した強さで制してみせた。黒帯として初めての世界的舞台となる今大会では、一回戦でレネ・ロペス(ブラザCTA)と対戦。これを突破すればミヤオとの大勝負が待っている。

【フェザー級】
世界を4度制したコブリーニャことフーベンス・シャーレス(アリアンシ)がエントリー。強靭な肉体と長い手足を用いた豪快なスイープと卓越したパスガード力を誇るレジェンドは、37歳にして今年のヨーロピアンでも圧勝。今回もその優位は揺るがないだろう。

さらに反対のブロックには、そのコブリーニャの愛弟子のアイザック・ドーダーラインと、今年ヨーロピアンの決勝をコブリーニャと同門決勝戦を戦ったジャンニ・グリッポという、米国モダン柔術の旗手二人が並ぶ。最強の布陣で臨むアリアンシがヨーロピアンに次いでワンツーフィニッシュを決める可能性は限りなく高い。

このアリアンシ勢に食い込む最有力候補は、ノーギ・ワールズを現在3連覇中のケイシーニョことオズワウド・モイジーニョ(アレス)か。

【PJJC2017】ライト級はレプリの独走??。混戦ミドル級はソウザ、ホミーニョら役者揃い

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Leite【写真】3P取れるトップゲームが他の追随を許さないルーカス・レプリ (C)MMAPLANET

16日(木・現地時間)から19日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われている。実に5日間もかけて行われるこのイベントは、世界選手権に次ぐ規模のブラジリアン柔術大会だ。世界選手権への前哨戦ともいえ、多くの強豪が顔を揃えた同大会アダルト黒帯の部の見所──プレビュー第2回は、最も出場人数が多いライト、ミドルの2階級を紹介したい。


【ライト級】
最多35人が参加したこの階級には、現在世界3連覇中のルーカス・レプリ(アリアンシ)がエントリー。ディープハーフガードからのスイープとニースライド・パスという二大必殺技に加え、極め力も圧倒的な最強柔術家の一挙手一投足に注目だ。

今回このレプリとの決勝戦が期待されるのが、マーシオ・アンドレ(ノヴァウニオン)。昨年の世界柔術フェザー級準決勝において、レジェンド・コブリーニャからパスガードを奪い世界を驚かせた若武者は、無差別級の舞台で重量級の世界トップとも互角に渡り合う地力の持ち主。今年のヨーロピアンのライト級も順当に制した充実のアンドレとレプリの一騎打ちは、夢の対決の一つと言っていい。

また、今年のヨーロピアン大会で3位に入賞、世界レベルの実力を証明してみせた岩崎正寛(カルペディエム)の戦いぶりも注目だ。昨年の世界柔術の二回戦ではレプリにマルセロプラッタで腕を極められ、世界の頂点の卓越した技術を体で体感した岩崎。一回戦のマーカス・ウィルソン戦を突破すると、おそらく昨年のヨーロピアン王者にしてアトスの注目株、マイケル・リエラ・ジュニアとの一戦となる。今後も長くライバルとして立ちはだかりそうな強敵を制し、準決勝で再びレプリに挑む岩崎の姿をぜひ見たいところだ。

さらにこの階級には、ホドリゴ・フレイタス(ホドリゴ・フレイタス)ヴィトー・シウヴェイロ(GFチーム)マルセリーニョの弟子のマンシャー・ケラ(アリアンシインターナショナル)、アンドレアス・ブルノフスキ(アトス)、AJアガザーム(グレイシー・バッハ)ら注目選手が並び、上位入賞を虎視眈々と狙っている。

【ミドル級】
世界的強豪がひしめく最激戦区となったこの階級。本命は昨年を含め3度世界王者に輝いているオターヴィオ・ソウザ(グレイシー・バッハ)だ。一時期は戦績が振るわなかったオモプラッタの名手だが、昨年は世界王座を奪還し完全復調。今年ベルクートで行われた大会では、決勝こそ階級上の同門でその世界大会をクローズアウトしてガブリエル・アルジェスに譲ったものの、準決勝でクラウジオ・カラザンスを下すなど調子は上々のようだ。

さらにバッハからは、なんとホミーニョことホムロ・バハウがエントリー。これまで主にミディアムヘビー級で戦い、世界を5度制したレジェンドは、昨年の世界大会にて涙の引退を表明。「世界大会での僕の役割は終わった」と語っていたが、それ以降もグランドスラム大会等で活躍し健在ぶりを見せている。若手や現役バリバリの世界的強豪がひしめく中、14年ぶりにミドル級で戦うというホミーニョの奮闘に期待したい。

さらに今の階級には、一昨年の世界大会の準決勝でソウザを倒して準優勝に輝いたヴィトー・オリヴェイラ(GFチーム)、師のレアンドロ・ロ譲りの戦いで昨年の世界大会で3位に輝いたヤゴ・ソウザ(N’sブラザーフッド)、その美貌と各種オモプラッタの仕掛けで名を馳せるクラーク・グレイシー(クラーク・グレイシー)、今年のヨーロピアン王者マルセロ・ティノコ(アリアンシ)ら世界的強豪がズラリ。誰が優勝してもおかしくない群雄割拠ぶりだ。

さらにさらに、スパイダーガードからの強烈なスイープを持つアブマー・バルボーザ(ズィニス)、ベースボールチョークの名手であるマジッド・ヘイジ(グレイシー・バッハ)、昨年のノーギ・ワールズ戴冠で世界を驚かせたジョシュ・ヒンガー(アトス)、マルセリーニョの弟子ジョナサン・サタヴァ(アリアンシ)等の注目選手もエントリー。世界大会前哨戦を越えた前哨戦、まさに見逃せない戦いが繰り広げられることとなる。

【PJJC2017】パンでもヘビー級、レアンドロ・ロ。ミッドヘビーはマクレガーの影響受けたダニスに注目

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Lo【写真】ヨーロッパに続き、パンでもヘビー級にエントリーのロ。欧州はともかくパンにヘビー級で出場するということは、ムンジアルもそうなるということか(C)MMAPLANET

16日(木・現地時間)から19日(日・同)にかけてカリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われている。実に5日間もかけて行われるこのイベントは、世界選手権に次ぐ規模のブラジリアン柔術大会だ。世界選手権への前哨戦ともいえ、多くの強豪が顔を揃えた同大会アダルト黒帯の部の見所──プレビュー最終回は、重量4階級を紹介したい。


【ミディアムヘビー級】
下のミドル級とはうって変わって、目立った世界的強豪の名が見当たらないのが18人参加のこの階級だ。そのなかでもっとも知名度が高いのは、マルセリーニョの驚異の弟子の一人にして、昨年のパンノーギ大会で2階級制覇を成し遂げたディロン・ダニス(アリアンシ)だろう。

コナー・マクレガーのキャンプに柔術コーチとして参加した際のディアズ陣営とのやり合いで一躍脚光を浴びた23歳の若者は、その後も(まだMMA未経験にもかかわらず)『UFCファイター全員と戦ってもいいぜ』と発言する等、派手なアピールで話題を呼んでいる。そしてつい先日、ベラトールとの契約も発表されたダニス。今回ビッグタイトルを取れば、さらなる注目を集めることになる。

さらにこの階級には、2年連続ノーギ・ワールズを制覇しているハルクことルーカス・バルボーザ(アトス)、去年の世界柔術で3位に輝いたパトリック・ガウジオ(GFチーム)らの有力選手も参加している。

【ヘビー級】
世界柔術でライト級からミディアムヘビー級まで3階級を制覇したレアンドロ・ロ(N’sブラザーフッド)が、今年のヨーロピアンに続いて今回もヘビー級にエントリー。ビルドアップした肉体をもって体格的ハンディをまるで感じさせない戦いで、ヨーロピアンを圧勝した怪物にとってのこの大会は、世界4階級制覇に向けて最終調整といったところか。

ロに立ち向かう選手としては、マルセリーニョ軍団のマテウス・ディニス(アリアンシインターナショナル)、そしてヨーロピアンでロと決勝を争ったタナー・ライス(ソウルファイターズ)らが挙げられる。

【スーパーヘビー級】
大注目は、なんと言ってもエルベース・サントス(ロイド・アーヴィン)。暴風雨の如き圧倒的な極め力もって、昨年はヨーロピアンにてフィリッピ・ペナの腕を破壊、そして世界柔術では15年から全階級を通して世界最強の柔術家の座を守っていたベウナウド・ファリアの腕も極めて戦線離脱を余儀なくさせたクラッシャーだ。昨年こなした試合数は何と70を超え、一本勝ち率も高い23歳は、今年はどんな進化を見せてくれるのか。

さらに同チームからは、やはり成長著しいモハメッド・アリーも参戦。チーム・アーヴィンの重量級スター二人の対抗馬としては、大ベテランのホドリゴ・カヴァカ(ズィニス)、ADCC世界大会準優勝の実績を持つジャレド・ドップ(ヒベイロ)らが挙げられる。

【ウルトラヘビー級】
世界最強の柔術家ブシェシャことマーカス・アルメイダこそ出場しないものの、その首を虎視眈々と狙う強豪が揃ったのがこの最重量級だ。アブダビ・ワールドプロ大会の決勝で何度かブシェシャと覇を争ったテクニシャンアレキサンダー・トランスと、一昨年にブシェシャを負傷に追い込み世界を驚かせたヒカルド・エヴァンゲリスタのGFチーム勢、ADCC世界大会や世界柔術で準優勝の実績を持つガブリエル・ホシャ(ソウルファイターズ)、昨年ノーギ・ワールズ準優勝のグスタボ・ディアズ(ヒベイロ)らがビッグタイトル獲得を狙って鎬を削り合うこととなる。


【PJJC2017】独走のマルファシーニ、ルースター優勝。ライトフェザー、嶋田×世界=ジョアオ・ミヤオ

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16日から19日にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。世界選手権の前哨戦として、多くの強豪が顔を揃えた同大会。レビュー第1回は、アダルト黒帯の部の軽量2階級の模様をお届けしたい。

【ルースター級】
世界を狙える日本人、橋本知之と芝本幸司の両者が欠場した最軽量級は、絶対王者のブルーノ・マルファシーニと昨年準優勝のルーカス・ピニェーロの2人が順当に決勝進出を果たした。

<ルースター級決勝/10分1R>
ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル) 
Def. by 9-2
ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)

開始早々引き込んだ両者。ピニェーロは上を選択してアドバンテージを獲得するが、そのズボンの足首部分を掴んだマルファシーニは、一瞬でそれを引いて立ち上がって2点先取。さらにマルファシーニは素早い動きでピニェーロの頭側まで回るが、ピニェーロは両足首にしがみ付いて腹ばいになってスクランブル。そのまま上を取り返して同点にしてみせた。

下になったマルファシーニは、低く体重をかけるピニェーロの襟を掴んでカラードラッグで前に崩してから、すかさず対角線の足を掴んでシングルレッグに移行して倒して4-2に。下から積極的に仕掛けるピニェーロは、ラッソーやラペルを掴んでの攻撃を試みた後にタックルに移行するが、マルファシーニに逃げられる。

自ら座り込んだマルファシーニは、再び強烈なカラードラッグでピニェーロの体を崩して6点目。ピニェーロは下から足を絡めてゆくがが、マルファシーニは自分から背後に倒れ込んで足を解き、その後また戻るという身体能力を存分に活かしたディフェンスを見せる。その後マルファシーニはマットに腹ばいになるようにしながら横に動き、絡めようとするピニェーロの足をすり抜けるようにしてサイドを奪取。7点差を付けて完全に勝負を決めたのだった。

健闘するピニェーロに対し、抜群のタイミングとキレのカラードラッグ、瞬発力とボディバランスを活かしたトップからの攻撃で差を見せつけたマルファシーニ。世界4連覇に向けて死角はなさそうだ。


【ライトフェザー級】

<ライトフェザー級一回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
Def.by 2-2 マイナスアドバンテージ 0-1
レネ・ロペス ブラジル(ブラジル)

引き込んだロペスは、スパイダーやデラヒーバで足を効かせる。嶋田は片膝を着いた体勢でベースを取りながら、担ぎや横に動いてのパスを狙うが、その度に柔軟な腰と股関節を持つロペスが巧みに足をこじ入れてガードに戻す展開が続く。中盤またしてもパスを仕掛けた嶋田に対し、ロペスはトルネードスイープ狙いに。しかしその足が嶋田の道着の中に入ってしまったからか、レフェリーが試合を中断。やがてロペスにマイナスアドバンテージが入った。

その後も嶋田は、ロペスの下からの仕掛けを丁寧に潰してゆく。終盤、状況を打開したいロペスは嶋田の裾を引き出して、首の後ろに回して足で蹴ってのスイープ。島田のバランスを崩して上を取って2点先取してみせた。しかし嶋田は下になると同時にロペスの右足を伸ばして抱えると、すぐに立ち上がって上を取り返してすぐに2-2の同点に。その後は嶋田がロペスの下からの攻撃をやり過ごし、時間終了。安定感のあるトップゲームと、下になってもすぐに上を取り返す技術を見せた嶋田が、パン大会黒帯デビュー戦を見事勝利。ジョアオ・ミヤオとの大一番を実現させた。

<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 6-0
嶋田裕太(日本)

試合後すぐに引き込んだミヤオは、両手首を掴んでラッソーガードから煽りにかかる。脇をタイトに締めて前重心でそれを捌く嶋田だが、やがてミヤオはベリンボロへ。下から嶋田のズボンに手を伸ばし、上を取って2点先制してみせた。下になった嶋田も、すかさずミヤオの右足を引き寄せてのスイープ狙い。だが、絶妙のボディバランスで耐えたミヤオは足を振りほどく。

その後ミヤオのニースライドパスを凌いだ嶋田は、カラードラッグでミヤオを崩して素早くバック狙い。しかし、ミヤオもすぐに反応して許さず、両者は場外へ。嶋田はポイントを取り返せないままスタンド再開に持ち込まれてしまった。

その後引き込んだミヤオは、嶋田の体を前に崩してから再びベリンボロへ。そのまま50/50を作って上を取ってリードを4点に伸ばすと、足関節狙いで転がって場外ブレイクに入り、またしても無失点で仕切り直しに持ち込んだ。

残り3分半でまた引き込んだミヤオ。嶋田は激しく動いてミヤオの頭側に回ってのパスを狙うが、ミヤオは柔軟な体を利して足をこじ入れると、またもやベリンボロ風に背後を狙い、嶋田が背中を付けダブルガードとなったところで上をとって6点目。下になった嶋田はミヤオの道着を引いてから立ち上がってのテイクダウンを仕掛けるが、これまた場外ブレイクに。

その後も嶋田は積極的に上下からの攻撃を試みるが、ミヤオから点を奪うことはできず、時間切れ。ミヤオの下攻めに対して上から堂々と渡り合い、運動量も最後まで落ちなかった嶋田。ミヤオに上は取られても、パスを許す気配すらなかったところに、世界を狙えるその実力を見せつけた。

と同時に、ミヤオが3度に渡って確実に下から点を稼いでみせたのに対し、嶋田は下から攻めても一度も点を取れず、ことごとくブレイクに持ち込まれたことも事実。決して届かないわけではないが、まだまだ遠い世界へのこの6点の差を、これからこの若者がどう埋めてゆくか、その戦いを今後も見届けたい。

ミヤオは続く準決勝にてサミール・シャントレと対戦。スイープで上を取った後、胸を合わせての肩固め狙いで完全に上半身を殺しから、足を抜いてのパスを決めてみせた。その後も肩固めでシャントレの動きを封じながら何度もマウントを取るなど、終わってみれば22-2で大勝。ヨーロピアンでまさかのパスガードを許しての敗北を払拭する勝ちっぷりだった。

もう一方のブロックでは、優勝候補筆頭のマイキー・ムスメシが初戦で新鋭のクレバー・ソウザにレフェリー判定で破れる波乱。そのソウザは、準決勝で初戦で日本の山田秀之を倒したチアゴ・バホスに2-4で敗戦。結局ミヤオとバボスのPSLPBシセロ・コスタ勢がクローズアウトを果たしたのだった。

■リザルト

【ルースター級】
優勝 ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)
準優勝 ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)
3位 エドゥアウド・バルボーザ(ブラジル)
3位 カーロス・リマ(ブラジル)

【ライトフェザー級】
優勝 チアゴ・バロス(ブラジル)
準優勝 ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
3位 クレバー・ソウザ(ブラジル)
3位 サミール・シャントレ(ブラジル)

【PJJC2017】残り23秒の敗北、岩崎正寛が得たモノ。ライトはレプリが制し、フェザーはコブリーニャが優勝

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16日から19日にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。世界選手権の前哨戦として、多くの強豪が顔を揃えた同大会。レビュー第2回は、アダルト黒帯の部におけるフェザー、ライトの2階級の模様をお届けしたい。

【フェザー級】
世界を4度制覇したレジェンド、フーベン・シャーレスことコブリーニャが順当に決勝進出。激戦が予想されたもう一つのブロックでは、有力候補のジャンニ・グリッポが初戦でチーム・ロイド・アーヴィン所属の米国の新鋭シェーン・ヒル・テイラーにレフェリー判定で敗れる波乱が起こった。しかし、このヒル・テイラーは準決勝でケイシーニョことオズワウド・モイジーニョに足関節で反則負け。コブリーニャとモイジーニョが決勝で合間見えることとなった。

<フェザー級決勝/10分1R>
フーベンス・シャーレス(ブラジル)
Def. by 9-2
オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)

先に座ったコブリーニャは、デラヒーバフックからモイジーニョのズボンの足首部分と襟を掴み強烈に引いて前に崩すと、そのまま立ち上がって倒して先制点。さらにニースライド・パスを狙うが、モイジーニョもスクランブルで立ち上がる。

再び引き込んだコブリーニャは、再び足首と襟を掴んで立ち上がるスイープで4点目。下になったモイジーニョがオモプラッタを狙うと、その腕を抜きながらサイドに回って7-0とリードを広げる。その後モイジーニョはスクランブルして立ち上がることに成功したが、コブリーニャはまたしても引き込んでから上になって9点目。モイジーニョも上を取り返すが、ズボンの足首の部分を掴んだコブリーニャの強烈なグリップの前に展開を作れず。結局9-2の大差でレジェンドが貫禄の勝利を見せた。

ヨーロピアンに次いで今年国際大会2連覇を果たしたコブリーニャ。この試合での強靭なグリップと強靭かつ柔軟な足腰を用いたスイープ、そしてパスを見る限り、力は衰えているどころか増しているかのようにすら思える。世界柔術での復活劇はあるだろうか。


【ライト級】

<ライト級一回戦/10分1R>
マーカス・ウィルソン(米国)
Def. by 足首固め
岩崎正寛(日本)

試合後すぐにテイクダウンを狙った岩崎は、そのまま引き込んで得意のディープハーフを作る。さらに相手のラペルを引き出して掴むと、強力なブリッジで返す得意のパターンで2点先制。上からでベースを作った岩崎は、ウィルソンの仕掛けるスパイダーやシッティングガードからの仕掛けを潰しては低くプレッシャーをかけてゆく。

やがて岩崎はウィルソンの足を一本超え、ハーフ上で胸を合わせてアドバンテージを取ると、そのまま片足担ぎに移行してパスに成功。5-0とリードを広げてみせた。

試合がスタンドに戻ると、再びテイクダウン狙いから引き込んでディープハーフを作った岩崎。今度はブリッジから勢い良く後方にヘッドスプリングをするかのようなアクロバティックな動きで上になり、7-0に。さらに相手の三角狙いに乗じて頭を抜いて、バックに回りかけるなど岩崎は優勢に試合を進めていった。

残り1分。一発逆転を狙うしかないウィルソンはバタフライで岩崎を浮かせて空間を作ると、その足を取って足首固め狙い、さらに腹這いになって膝十字を狙うが、岩崎は腰を遠ざけて対処。ここで上になったウィルソンに対し、岩崎は再びディープハーフの体勢に。2点は返されたものの、これで一安心……と思いきや、ここでウィルソンが最後の望みを賭けての足狙いに。まずは下の足を狙うと見せかけてから上の足を取って絞り上げると、たまらず岩崎がタップ!

試合を終始リードしていたにもかかわらず、終了まで23秒のところでまさかの一本負けを喫してしまった岩崎。足を連続して狙われて集中力が切れたのか。あるいは、圧巻のスイープとパスを通して身体能力の差を見せつけたことで、心のどこかで油断が生じたか。

いずれにせよ──、ポジショニングを軸とした柔術の地力では遅れを取っていたウィルソンが、勝利への執念という点で岩崎を上回っていたことは否めない。フィジカル強化に励み、世界レベルのスイープとトップゲームを作りあげた岩崎が、パンでの敗北を糧にムンジアルに生かしてもらいたい。

<ライト級決勝/10分1R>
ルーカス・レプリ(ブラジル)
Def. by 2-0
マーシオ・アンドレ(ブラジル)

予想通りに勝ち進んだ両者による、注目の一戦が実現。強烈無比なパスガードを武器とする両者だけに、お互いすぐには下にならず、スタンドで腰を引いて袖と襟を取り合った状態からの「BJJ柔道」とでも呼びたくなる攻防が続く。レプリがヒザ付き背負い、カラードラッグ、ズボンの足首部分を掴んでのアンクルピック狙いを見せれば、アンドレも足を飛ばすが決め手とならず、試合時間の半分が経過した時点で両者にマイナスアドバンテージが宣告された。

その後、ついに引き込みを仕掛けたのはレプリの方。大きくステップオーバーしてパスを狙ったアンドレの右足を肩で抱えることに成功すると、逃げようとするアンドレを煽って立ってみせるが、一度は崩れたアンドレもすぐに立つ。ここでレプリにアドバンテージが入った。

試合は再びスタンドに戻り、アンドレの襟を掴んだレプリは頭を下げてのレベルチェンジで右足を抱えてのシングルレッグへ。アンドレが片足で堪えると、そのヒザ裏からアンドレの帯を持ってグリップを強化。そのまま揺さぶって倒し2点を先制してみせる。

さらにレプリは必殺のニースライド・パスを狙って右ヒザを立てる。懸命に距離を取りながらラッソーを作ろうと試みるアンドレ。そこでレプリはヒジを巧みに使って封じると、アンドレの両ヒザ裏に体重をかけてスタック──これで勝負あり。アンドレの動きを封じた2-0で試合を終えた。

突出したパスガードの使い手のレプリだが、強力なトップゲームを誇るアンドレ相手に、引き込んでからのガードワークと豊富な立ち技で得点を稼いでの勝利。どの局面においても隙のない絶対王者ぶりを見せつけた。

■リザルト

【フェザー級】
優勝 フーベン・シャーレス(ブラジル)
準優勝 オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)
3位 ヴィクトー・ジェノベシ(ブラジル)
3位 シェーン・ヒル・テイラー(米国)

【ライト級】
優勝 ルーカス・レプリ(ブラジル)
準優勝 マーシオ・アンドレ(ブラジル)
3位 マイケル・リエラ・ジュニア(米国)
3位 ヘナート・カヌート(ブラジル)

【PJJC2017】最激戦区ミドル級はオターヴィオ・ソウザ、ヘビー級は怪物ロもタナーの健闘目立つ

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16日から19日にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。世界選手権の前哨戦として、多くの強豪が顔を揃えた同大会。レビュー第3回は、アダルト黒帯の部におけるミドル、ミディアムヘビー、ヘビーの3階級の模様をお届けしたい。

【ミドル級】
最激戦区となったミドル級は、元世界王者のオターヴィオ・ソウザが2回戦でアブマー・バルボーザをチョークで、準決勝では一昨年に世界準優勝にして、マジッド・ヘイジやクラーク・グレイシーを倒して勝ち上がったヴィトー・オリヴェイラと対戦。0-0のアドバンテージ差で下して決勝進出した。

もう一つのブロックでは、昨年12月に黒帯に昇格したばかりの新鋭イサッキ・バイエンスが準決勝に進出し、大ベテランのホムロ・バハウに挑んだ。開始早々テイクダウンを奪ったバイエンスは、その後スイープを返される。引き込んだバイエンスは、下から煽って立ちながらバハウの背後に回り、投げを放つ。ここで、左手を伸ばして着地しようとしたバハウがその肘を負傷。4-2とリードしたバイエンスは、バハウの片手での必死の反撃を時間切れまで凌ぎきり、黒帯初の国際舞台において殊勲の決勝進出を決めたのだった。


<ミドル級決勝/10分1R>
オターヴィオ・ソウザ(ブラジル)
Def. by 三角絞め
イサッキ・バイエンス(ブラジル)

バイエンスは試合開始と同時に走り寄り、スライディングをするようにソウザの右足に両足を絡める。その足を両腕でも抱えたバイエンスは、そのまま立ち上がってシングルレッグに移行した。片足立ちを余儀なくされたソウザは、ここで大きく跳んで跳び三角へ。完全に左足でバイエンスの右腕を超えてロックを完成したソウザは、そのまま頭を手で下げさせて絞め上げるとバイエンスがタップ! わずか40秒足らずでソウザが一本勝ちで優勝を果たした。

【ミディアムヘビー級】
優勝候補の2人、ガウジオとバルボーザが順当に決勝進出。ちなみにコナー・マクレガーの練習パートナーとして話題性ではNo1のディロン・ダニスは、初戦でルーカス・ホシャに8-2で敗北。そのホシャは準々決勝でバルボーザに11-0で完敗している。

<ミディアムヘビー級決勝/10分1R>
パトリック・ガウジオ(ブラジル)
Def. by 2-0
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

開始早々引き込んだのはガウジオ。クローズドガードやラッソーガードから仕掛けるが、対するバルボーザも重心を低くしてベースを取り、担ぎなどを狙ってゆく展開が続く。試合時間が半分を過ぎた頃、バルボーザは対角線に足を高く伸ばすスパイダーガードでハルクのバランスを前に崩しながら自分も後転。そのままダブルレッグにつなげてバルボーザを抱え上げ、見事にテイクダウン。2点を先制してみせた。

下になったバルボーザもラッソーガード等から仕掛けるが、重心を低くしてプレッシャーをかけるガウジオのベースを崩せず。2-0でガウジオが重厚な攻防を制して優勝した。

【ヘビー級】
今年からこの階級に進出をはじめた怪物ロは、順当に決勝進出。もう一方のブロックでは、準決勝でタナー・ライスがディミトリアス・ソウザをレフェリー判定で下し、ヨーロピアン同級決勝の再戦が行われることとなった。その時はロが腕十字で一本勝ちしているが、今回は?

<ミディアムヘビー級決勝/10分1R>
レアンドロ・ロ(ブラジル)
Def. by 4-2
タナー・ライス(米国)

まず引き込んだライスは、ズボンの足首と袖のグリップを掴むとロを前に崩してから立ち上がり、そのままグリップを離さずにテイクダウン。 コブリーニャが決勝戦で決めた技と似たような形のスイープの仕掛けから、2点を先制してみせた。しかしロもすぐにシッティングガードからラペルを取ってシングルレッグに移行して同点に。

下になったタナーはラッソーを作って抵抗し、立ち上がることに成功。ここでロは素早く上体を下げると、タナーの左足を掴んでシングルレッグを決めて4-2とリードする。

タナーは再びラッソーから作ろうとするが、ロは巧みにヒジを内側に入れて切る。その後、タナーは下からロの右足を肩で抱えることに成功するが、卓越したバランス感覚を持つロは、長い手をポストして態勢を保ち、やがて足を抜いてみせる。タナーは今一度ラッソーを作るが。ロはその足を押し下げながらプレッシャーをかけ、ベースを保って試合終了までタナーの仕掛けをやり過ごしてみせた。

予想通り、ロが危なげない戦いぶりでヨーロピアンに続いてヘビー級を制覇した。やや安全運転気味だったのは否めないが、それでも先制のスイープを奪い、その後もパスを許さなかったライス──上位3階級で唯一非ブラジリアンで表彰台に立った──の健闘も目立った一戦だった。

■リザルト

【ミドル級】
優勝 オターヴィオ・ソウザ(ブラジル)
準優勝 イサッキ・バイエンス(ブラジル)
3位 ホムロ・バハウ(ブラジル)
3位 ヴィトー・オリヴェイラ(ブラジル)

【ミディアムヘビー級】
優勝 パトリック・ガウジオ(ブラジル)
準優勝 ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
3位 ヘナート・カルドッソ(ブラジル)
3位 ホドリゴ・ファジャウド(ブラジル)

【ヘビー級】
優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
準優勝 タナー・ライス(米国)
3位 ディミトリアス・ソウザ(ブラジル)
3位 マテウス・ディニス(ブラジル)

【PJJC2017】レアンドロ・ロ、ウルトラヘビー級優勝のホシャを足首固めで破り無差別も制する!!

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16日から19日にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。世界選手権の前哨戦として、多くの強豪が顔を揃えた同大会。レビュー最終回は、アダルト黒帯の部のスーパーヘビー、ウルトラヘビー、そして無差別級の模様をお届けしたい。

【スーパーヘビー級】
圧倒的な極めの力で昨年一躍注目の的となったエルベース・サントスは、準決勝でロイド・アーヴィン軍の元チームメイトであるモハメッド・アリーと対戦。試合中お互い額を付け挑発し合い、場外でも激しくやり合いアリーが出血する激闘となったこの戦いは、上半身の煽りだけで一瞬でアリーの巨体をマットに叩きつける恐るべきテイクダウンをサントスが見せれば、アリーも執念のタックルで取り返す展開に。最後は懸命に抑えにゆくアリーを、サントスがラッソーからのスイープで返して試合終了まで上をキープ。レフェリー判定勝ちを告げられると咆哮したサントスが決勝に進出し、大ヴェテランのホドリゴ・カヴァカと対戦した。

<スーパーヘビー級決勝/10分1R>
エルベース・サントス(ブラジル)
Def. by 3-0
ホドリゴ・カヴァカ(ブラジル)

試合開始早々、カヴァカは飛びついてクローズドガードへ。さらにそこから反転してヒザ十字を狙ってゆくが、サントスは腰を落として対処。やがてカヴァカの腕を振りほどいて距離を取ることに成功したサントスは、改めて低く座り込んでカヴァカの右足をマットに押し付けると、それを乗り越えてのパスに成功して3点先取!

カヴァカを完全に抑え込んだサントスは上四方に回り、頭をまたいで横三角の態勢を作って完全にその動きを止める。そのまま腕を取ってのフィニッシュも狙える態勢だが、サントスは無理せず上をキープしたまま時間が過ぎてゆく。残り1分少しのところでカヴァカはなんとか頭を抜くことに成功。展開が生まれるかと思ったが、サントスは体重をかけて無理せず上四方をキープ。2つのマイナスアドバンテージを受けつつも時間まで抑え切って勝利した。

暴力的なまでの極めの力と、一度状態が固まったらペナルティが蓄積してもリスクを犯そうとしない極度の慎重さを併せ持ったサントス。とてつもない強さと不安定さと冷静さが同居した、興味深いファイターだ。



【ウルトラヘビー級】
両ブロックを勝ち進んだアレクサンダー・トランスとアドソン・ゴビが両者とも負傷のためか準決勝に出てこなかったため。残りのベスト4進出者であるガブリエル・ホシャとグスタヴォ・ディアズが自動的に決勝で対戦することとなった。

<ウルトラヘビー級決勝/10分1R>
ガブリエル・ホシャ(ブラジル)
Def. by
グスタヴォ・ディアズ(ブラジル)

立ち技での攻防がしばらく続く。ディアズの背負い投げを潰したホシャが上を取るが、ディアズはすかさずディープハーフを作る。そこからヒザで浮かせてのスイープを狙うディアズだが、逃れたホシャは自らの膝を入れてのニースライド・パスを狙う。これを耐えたディアズはうまく体をずらして再びディープハーフから同じスイープを仕掛けるが、ホシャは見事なボディバランスで上をキープし、そのまま背中に着く。

やがてシングルバックから両足フックを完成して4点を先制したホシャは、そのまま送り襟締め。巨体に似合わぬ俊敏な動きと優れたボディバランスを見せたホシャが優勝した。

【無差別級】
一つ目のブロックは、怪物レアンドロ・ロが順当に決勝進出。もう一つの準決勝は次の日ウルトラヘビーを制するガブリエル・ホシャ(ブラジル)が、やはり翌日スーパーヘビーを制するエルベース・サントスと対戦。試合開始早々の背負いを潰されてバックを奪われるピンチに陥るも、ディープハーフからスイープを決めると、サントスのヒザ十字狙いを潰してパスを奪い逆転し、マウントからの肩固めで一本勝ち。ヘビー級と最重量ウルトラヘビー級の覇者同士による決勝戦が実現した。

<無差別級決勝/10分1R>
レアンドロ・ロ(ブラジル)
Def. by 足首固め
ガブリエル・ホシャ(ブラジル)

ロが数年かけて体重を上げてきているとはいえ、だいぶ体格差のある両者。まずホシャはロの帯を掴んで引き込むと、そのまま跳ね上げてのスイープ!  際重量級離れした躍動感のある動きでロの体を見事に舞わせ、2点を先制してみせた。下になったロも、すぐにスイープ狙いで煽って距離をとって立ち上がる。

スタンドに戻るとホシャは背負いをみせるが、これを防いだロは引き込み。そしてすかさず内回りスイープで上をとって同点に。しかし、ここで両者の足は50/50の状態で絡んでいる。下から煽って上を狙うホシャだが、ロは持ち前のバランス感覚で足を抜く。ホシャはそこですかさず立ち上がって追いかけ、ロの背中についたところで場外に。ホシャにアドバンテージが加えられたが、すぐにこのアドバンテージは2点に変更された。

スタンドで再開されると、ホシャはすぐにロの背中を取りにゆく。するとすぐにロはすぐにガードに飛びついて対処。クローズドをすぐに開いたロは、再び内回りスイープを仕掛けて50/50で上の状態に。すると次の瞬間にロは、空いているホシャの足首をひねり上げるトーホールドに。ホシャは一瞬でタップ! ロがヘビー級と合わせてこの大会完全制覇を成し遂げた。

開始早々引き込みスイープをもらうと、その後はすぐに引き込むことで対処。そして一度は50/50の体勢からポイントを取られると、二度目には同じ状態からすぐに足首を極める。抜群の身体能力と技の切れに加え、試合中に即座に相手の戦い方に対応・修正できる柔軟性をも見せつけた怪物は、世界大会での4階級制覇に加え、無差別制覇まで成し遂げてしまうのではないか。そんな可能性すら感じさせるロの完全優勝だった。

■リザルト

【スーパーヘビー級】
優勝 エルベース・サントス(ブラジル)
準優勝 ホドリゴ・カヴァカ(ブラジル)
3位 ポール・アーディラ・イバラ(米国)
3位 モハメッド・アリー(ブラジル)

【ウルトラヘビー級】
優勝 ガブリエル・ホシャ(ブラジル)
準優勝 グスタヴォ・ディアズ(ブラジル)
3位 アドミルソン・ゴヴィ(ブラジル)
3位 アレクサンダー・トランス(デンマーク)

【無差別級】
優勝 レアンドロ・ロ(ブラジル)
準優勝 ガブリエル・ホシャ(ブラジル)
3位 エルベース・サントス(ブラジル)
3位 ニコラス・メレガリ(ブラジル)

【PJJC2017】サンパウロ発、嶋田裕太「強くなるためにここに来る」

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Yuta Shimada【写真】サンパウロで充実の日々を過ごした嶋田裕太 (C)MMAPLANET

パン柔術に黒帯として初めて出場を果たした嶋田裕太。初戦はレネ・ロペスに勝利し、2回戦でジョアオ・ミヤオに6‐0で敗れた。


ミヤオの下攻めに渡り合い、パスを許す気配もなかった。同様に下になったときにはポイントを取れず、場外ブレイクに持ち込まれた。黒帯の世界トップを戦ったのち、嶋田は4年振りにサンパウロのアリアンシを訪れた。

そこで嶋田に起こった変化を――ブラジルより本人の言葉で伝えたい。

嶋田裕太
「パン選手権、2回戦敗退という結果は非常に悔しいですが、外国の黒帯選手に勝利することができたのは自信となりました。初戦の相手は僕が2013年のムンジアル決勝で負けた選手に最近勝っていて、なかなかの実力者だったと思います。

後半ワンスイープ狙いの選手に対する戦法を考える必要があると思いました。ロペスは積極的ではなく、のらりくらりと試合中盤まで時間を過ごし隙がない。そんなやりにくさを感じました。

そして後半に差し掛かった時にスイープを献上してしまい、まんまと相手の術中にハマってしまったと反省しています。同時にスイープでバランスを崩されている間、ギリギリ耐えられる可能性もあったのですが、それでアドバンテージを取られて再びガードをとる相手と対峙するのは厳しい、と考えることもでき、下になりながらすぐに良い形でガードのセットアップに切り替えることができました。

ポイントを取られたのを確認し、スイープをし返してなんとか勝てました。相手のプラン通りに戦ってしまい、このような戦術の選手は少なくないので、今後の課題として改善に取り組みます。

ジョアオ・ミヤオにも自分の柔術が少し出せて、日本でやっていることは間違っていないと感じました。ただし、強度や量が足りないので帰国したらすぐ取り組み方を改善するつもりです。

今回アリアンシ・サンパウロに来た目的は、友達に会うため、というのが半分ありました。友達といっても遊び友達ではなく、アリアンシ・サンパウロ所属の選手たちのことです。2013年4月にこのジムに訪れて以来、海外で試合や練習するときはアメリカに行っていたので、お世話になった人たちに久しぶりに再会したいと思っていました。

なので皆と再会できたら、半分はブラジルに来た目標が達成できて――次に来るのは、また会いたくなったらかなと考えていました。ただし、4年ぶりにクラスに参加して、来年も必ず来ようという想いに変わりました。

ここには多種多様な柔術家がいます。ることです。ファービオ・グージェウ仕込みの重厚な力強さを感じるベテランや、マイケル・ランギをコピーしたようなスパイダーガード使い、ルーカス・レプリを感じさせるパス巧者。ブルーノ・マルファシーニを思わせる身体能力を持つ若い選手など、本当に十人十色です。

柔術家としてのスタイルが非常にバラエティに富んでおり、皆が皆、各々のスタイルに自信を持っており、堂々としています。何より、軽量級の選手が多い米国で練習をしていて、自分と同階級が少ないと感じていました。

しかし、アリアンシ・サンパウロでは毎クラスに自分と近い階級の選手が5人前後はいますし、日本人のような体格の持主から、まるで違う手足の長い体型の選手まで、ファイトスタイルだけでなく肉体的な特徴も様々です。結果、練習がとても試合をイメージしやすく、常に緊張感を持って稽古に臨むことができました。

これまで自分が最も強くなれる場所は、ニューヨークのマルセロ・ガウッシアのアカデミーだと思ってきました。ほぼ全ての生徒がマルセリーニョの動きをするということで、長年マルセリーニョに憧れている僕にとって、自分のスタイルを磨き上げるにはベストな空間です。

ただし、大きな選手が多く、自分を除く最も小さい選手がジャンニ・グリッポだということが何度もありました。ここ数年の練習を振り返ると、自分の得意分野の強化に費やした時間が多かったと思います。これはこれで必要なことのはずですし、今後も続けます。

同様に今回アリアンシ・サンパウロに来て、色々なタイプの選手とシチュエーションスパーを繰り返し、好きなポジション以外の部分の全体的な底上げが必須だと感じました。知らない技、受け慣れていない技は掛かってしまいます。仕掛けられることで学び、反省し、試合に活かせることができると感じています。

自分のスタイルを磨くニューヨーク、実戦を想定したトレーニングができるサンパウロ。強くなるために、来年も必ずここに戻ってきます」

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